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2009年6月 4日 (木)

スイカズラ

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 スイカズラは、いろんな別名を持っていて、黄色と白の花をつけるところから「金銀花」、冬でも寒さに耐えて葉をつけていることから「忍冬(にんどう)」と呼ばれています。 ちなみに、生薬として使われる「金銀花」は、スイカズラのつぼみを集めたもので、抗菌作用や解熱作用があるとされています。
 花弁は根元は筒状になっていますが、先の方は上下2枚の唇状に分かれていて、さらに上唇は4裂しています。
 スイカズラの名は「吸い葛」の意味。 花を口にくわえて蜜を吸うところから、というのですが、花を引っ張ってちぎったままでは、花筒とガクがしっかりくっついていて蜜は閉じ込められたままで、いくら吸っても蜜は出てきません。 ガクと花筒を分離させても、それほどたくさんの蜜を持っているわけではありません。 昔の人にとっては、甘いものは貴重だったのですね。
 黄色と白の花をつけることについては、花をよく見ると、白い花の方が咲いて間もないことが分かります。 花の白い時期には、メシベもオシベもしっかり前方に伸びていて、オシベはたくさんの花粉を出しています(下の写真)。

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 この時、しばしばオシベの葯ととメシベの柱頭が接しています(下の写真)。 もしこの時既にメシベの柱頭が受粉能力を持っていて、自己の花粉でも花粉管を伸ばすことができるなら、間違いなく自家受粉が成立するでしょう。 でもそれは、スイカズラの果実のできる数からして、ありえないことだと思います。 この時期のメシベにはまだ受粉能力が無いのか、自家不和合性による自家受粉を防ぐ仕組みがあるのではないでしょうか。 この時期のメシベの受粉能力については、いつか調べてみたいものです。

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 花は時間と共に黄色くなっていきます。
 花の色の変化についてはこちらに書いています。 昆虫が花に止まることが刺激になって花の色が変化する植物もあるのですが、スイカズラの場合は2つの花がセットになって咲き、この2つの花がほぼ同じ色であることから、黄色くなる要素は時間だけだと思います。
 この黄色い時期の花を見ると、オシベは花粉を出し終えて、下に垂れています(下の写真)。 この様子からすると、花の黄色い時期は雌性期だと思われるのですが、それでは花の白い時期は雄性期なのかということになりますが、それにはメシベに受粉能力が無いことを証明しなければなりません。 それに、雌性期と雄性期がはっきり分かれているのなら、両方の時期に昆虫に訪花してもらう必要があり、そのための蜜の量はどうなのかということも気になります。

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 夕菅さんが、自宅の庭のスイカズラに来ているクマバチについて、いろいろ調べてくださいました(この記事のコメント)。 そのことについて、こちらの記事に、のとりあえずのまとめとして載せています。

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ツル植物」カテゴリの記事

コメント

おはようございます
すっかりごぶさたしてしまいました

スイカズラは香りがいいので日本のジャスミンと勝手に呼んでます
花に昆虫が止まると色が変化する花ってどんな花?
植物にも繊細な感情があるような気がしてきました

投稿: エフ | 2009年6月 4日 (木) 08時28分

・・・山深くひっそりと生き、やがて甘く薫る花を咲かせる「忍冬」のような女の思いを歌います・・・

よく歌っていたのに、その頃「忍冬」がどんなお花なのか知ろうともせずに・・・・

甘い香りに誘われて写真に撮って・・
それが「忍冬」と教えてもらって、感動モンでした。

投稿: わんちゃん | 2009年6月 4日 (木) 12時35分

エフさん、復活おめでとうございます。
長崎県の花や虫情報、楽しみにしています。
ベニバナは刺激を受けると色が濃くなりますし、色の変化以外にも刺激を受けて反応する花はたくさんあります。

わんちゃん、実際の忍冬を見ると、山深い所よりも身近な所に多い植物だということも分かるでしょ。

投稿: そよかぜ | 2009年6月 5日 (金) 00時14分

スイカズラのリンクからそよかぜさんの奥行きの深い世界に誘われて、あちこちで遊ばせて頂きました。
サルの前栽ってほんとにスリリングなとこなのですね。スケールの大きな滝もいっぱい。六甲もそうですが、比較的身近なところにこんな自然があるのですね。

投稿: ひとえ | 2009年6月 5日 (金) 20時55分

六甲も金剛山も花崗岩ですが、滝畑はいろんな岩石が入り混じっていて、そこに生える植物も違っていて、なかなかおもしろい場所ですよ。

投稿: そよかぜ | 2009年6月 5日 (金) 23時20分

スイカズラが好きで庭や駐車場に3本も植えていますのに、味見をしたことは一度もありませんでした。
そよかぜさんの記事を読んで、スイカズラの蜜の味を試したくなりました。
やっぱり蜜は甘かったので嬉しくなって、昨夜ブログに載せました。
お陰様で楽しい体験ができて感謝しています。ありがとうございました。


投稿: 夕菅 | 2009年6月10日 (水) 11時50分

夕菅さんのブログを見せていただきました。スイカズラの花のことを丁寧に調べられましたね。
庭に植えたスイカズラに実がつかないのは、受粉していないからだと思います。
私の記事に書いた花の白い時期の自家受粉は、たぶんしていないと思います。
そうなると、種子ができるためには昆虫による花粉媒介が必要ですが、長い筒状の底にある蜜を吸うためには、長い口が必要です。それに加えて、遠くまで届く香りや暗闇でも目立つ白い花の色は、夜の訪花昆虫を想像させます。
昼間にスイカズラを見ていると、花のわりには、ほとんど訪れる昆虫はいません。
花のつくりからしても、スイカズラの花粉媒介は、ホバリングできて長い口を持っているスズメガなどがしているのではないでしょうか。
夕菅さんの庭にはスズメガなどが来ているでしょうか。
庭にスイカズラが咲いているということですので、どんな虫たちが花を訪れているのか、観察してみてはいかがでしょうか。
それとあわせて、白い花の花粉を黄色い花のメシベにつける人工授粉をしてみたらどうなるでしょうか。

投稿: そよかぜ | 2009年6月11日 (木) 07時01分

そよかぜさん、ブログを見ていただいた上、種の疑問にも詳しくお教ええいただいてありがとうございました。
たしかにスズメガのように長い口のガは見たことがありません。
もう1株、園芸種のニオイニンドウがありますが、これには稀に赤い実がなったことがあります。
花期も終わりに近いようですが、早速人工授粉と昆虫の観察をしてみます。
おかげ様でまた楽しみができてうれしいことです。

投稿: 夕菅 | 2009年6月11日 (木) 08時34分

人工授粉や訪花昆虫の様子など、何か分かったらぜひお知らせくださいね。

投稿: そよかぜ | 2009年6月11日 (木) 23時59分

昨日、人口受粉なるものを試みようと思いましたが、オシベ・メシベは老眼の身にはあまりにも小さく難行でした(笑)。
どのステージの花に花粉がついているのか、ルーペでは確認できませんでしたので、顕微鏡でのぞいてみました。
すると意外にもまだ私が触れていない個体の柱頭に花粉がたくさんついていることがわかりました。葯にもまだ少し残っていました。
今朝見に行くと2匹のクマバチが花から花へとさかんに吸蜜していました。
これだったらもう人工授粉は不要のようでほっとしました(笑い)。
あとは実がなるかどうかです。

投稿: 夕菅 | 2009年6月15日 (月) 23時49分

口の短いクマバチが来ているとはおもしろいですね。
虫は長い花筒の底にたまっている蜜を吸いに来るのではなく、スイカズラの花は横向きに咲くので、花筒の出口付近まで流れ出してきている蜜を吸っているんですね。
それにしてもスイカズラの花にクマバチはうまくとまれるのでしょうか。ぜひ花の横から、クマバチと花の関係が分かる写真がほしいものです。動き回っていてピントがあまくても、クマバチとスイカズラの花の関係を示す写真になることでしょう。
クマバチ以外にもどんな虫が来ているのか、ぜひ写真で記録を残しておいてください。

投稿: そよかぜ | 2009年6月16日 (火) 06時53分

3日ほど観察してみましたが、やはりクマバチが主役のようです。
そして口吻の短いクマバチはスイカズラの花筒に直接口を差し込んで蜜を吸っていることがわかりました(盗蜜)。
拙い写真ですがメールに添付させていただきます。

投稿: 夕菅 | 2009年6月18日 (木) 00時18分

盗蜜の様子がよく分かるすばらしい写真ですね。でも、これでは受粉の効率はかなり悪そうですね。
送っていただいた写真は皆さんにも見ていただきたいと思います。
この写真を使って、このブログの記事にしてもいいでしょうか。

投稿: そよかぜ | 2009年6月18日 (木) 22時51分

盗蜜の写真、よろしかったらどうぞお使いください。
あの後、チェリーセージに向かったクマバチのもっとはっきりした盗蜜現場写真が撮れましたので、メールに追加送信いたしました。
クマバチが立ち寄ったあとのスイカズラの柱頭は花粉がたくさんついています。これを見ると「盗蜜」と決めつけるのはかわいそうかもしれませんね。
チェリーセージの蜜はスイカズラより甘いのですが、オシベが見えないので受粉が行われるのかどうかはわかりませんでした。

投稿: 夕菅 | 2009年6月19日 (金) 21時45分

写真ありがとうございます。近いうちに記事にさせていただきます。
スイカズラの柱頭についている花粉は、この記事の3枚目の写真のように、クマバチの訪花とは無関係についたものかもしれません。それであれば、花粉は付いていても種子形成に至らない可能性は十分あります。
まだツボミが残っていてクマバチが来続けるようでしたら、ツボミのうちから袋をかぶせるか何かでクマバチが近づけないようにして比較してもおもしろいのではないでしょうか。

投稿: そよかぜ | 2009年6月19日 (金) 23時53分

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