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2009年6月23日 (火)

マタタビ

 6月に山道を歩くと、まるでツル植物が花を咲かせたように、マタタビの白い葉が目立ちます。

Matatabi090620_1

 そのマタタビが花を咲かせ始めました。 マタタビには雄株と両性株(実は雌株? 詳しくは下に書きます)があります。 雄株にはメシベの無い雄花を咲かせ、両性株にはオシベとメシベが揃っている両性花を咲かせます。 メシベの先端は、たくさんの花柱が放射状に開出しています。

Matatabi090620_2
   雄花

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   両性花(雌花)

 マタタビの両性株には花弁のない雌花もつけると、保育社の「原色日本植物図鑑」などに書かれています。 すぐ上の写真の左上に半分写っているのがその花でしょう。 しかし、なかなかさんによると、これは単に両性花の花弁やオシベが枯れて取れてしまったものではないかということです(詳しくはこちら)。 上の写真の左上の花では、オシベはまだ残っているが、花弁は枯れて落ちてしまった状態ということになります。 花弁より少し小さな白いものはガクです。
 さらになかなかさんによれぱ、両性花と呼ばれている花のオシベは、見かけは立派ですが、花粉には発芽能力は無く、見かけは両性花ですが、機能的には雌花だということです。

 花は葉の陰に下を向いて咲きます。 これは雨の多くなる時期に花粉を雨に流されてしまわない良いアイデアかもしれませんが、これでは虫たちに目立たず、虫たちに来てもらえません。 葉が白くなるのは、これらの花のかわりに、虫たちの注意を引き、マタタビの存在を虫たちに知らせる“広告用の看板”ではないでしょうか。 花の時期よりかなり早い目に葉が白くなりだしていますが、“ここにもうすぐ花が咲きますよ”という“新装開店のお知らせ”といったところでしょうか。
 なお、この葉が白くなるしくみについては、葉が白い色素を作っているわけでも、葉緑体がなくなっているわけでもありません。 無色の表皮と葉緑体を持つ葉肉との間の細胞の隙間に気体が存在し、水分の多い細胞と気体の屈折率が異なるために光が乱反射され、白く見えるのです。 このことは、爪で葉の表面をしごくと、気体が周辺に移動し、緑に戻ることで分かります。
 上記の気体の発生は、光合成の盛んな葉で起こっているようです。 つまり、よく光の当たる元気な葉、つまり外からよく見える葉が白くなるわけで、苞のように花が近くにある葉が変化するのではありません。 しかしこのことは、マタタビの存在を知らせる“広告”としては、とても有意義ではないでしょうか。

 マタタビにはいろんな薬効成分があります。 木天蓼(もくてんりょう)と呼ぶ生薬にされるのは、マタタビタマバエが花に寄生してできる虫えい(=虫こぶ=ゴール)ですが、正常な果実もマタタビ酒の原料とされます。 なお、木天蓼は虫えいですので、雄株の雄花にもできます(というより、雄株の方が多いようです)。
 ちなみに、マタタビという名前は、疲れた旅人がマタタビの果実を食べると疲労が回復し、また旅ができるということからきているとする説が有名ですが、他にも、上記のように虫えいと正常な果実との2種類の“実”がみられることから、「またつ実」が訛ったとする説や、牧野富太郎博士は、アイヌ語の「マタタヌブ」が訛ったとする説を書かれています。 いずれも薬効成分が関係しているようです。
 「猫にマタタビ」と言われるのも、マタタビに含まれているマタタビラクトンとアクチニジンという成分が猫科の動物に恍惚感を与えるようで、ネコ科の動物であるトラやライオンにも有効なようです。

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コメント

もしも、もしもマタタビが手の届くところにあったのなら、ミー(me)にどっさりお土産を・・・・・と、
ゴメンねミーコちゃん・・・

投稿: わんちゃん | 2009年6月23日 (火) 16時57分

さすがそよかぜさん、マタタビを多角的に記事にされていますね。 葉が白くなるのはどうしてだろうと不思議に思っていました。 しくみは、水分の多い細胞と気体の屈折率によるものなのですね。

ところで、記事の中で、>マタタビの両性株には花弁のない雌花もつける・・・すぐ上の写真の左上に半分写っているのがその花でしょう。 と書いてある部分ですが、
写真に写っているのは、花弁のない「両性花」ではないでしょうか?

投稿: なかなか | 2009年6月23日 (火) 18時28分

マタタビの葉っぱがほんとは緑だなんて初めて知りました。ハンゲショウのように白と緑の部分があるのだとばかり思っていました。
「広告用の看板」、すんごく納得の行く喩えでこれなら覚えていられそうです。道を歩けば、植物の不思議がいっぱいなのですね。

投稿: ひとえ | 2009年6月23日 (火) 21時05分

わんちゃんへ
葉の白くなっているこの時期がチャンス。手の届くところにあるマタタビが今まで気付かなかった、ということがあったりします。

なかなかさん、保育社の「原色日本植物図鑑」(昭和54年10月発行)には、雌花、両性花、雄花の図が添えられていて、まさしく写真の花が雌花として書かれています。この本に書かれている雌花は、花弁が無く、オシベに対するメシベの大きさが、両性花より少し大きいものです。なかなかさんの説で、子房が少し成長を始めていると考えれば、すんなりと理解できます。

ひとえさん、ハンゲショウの白い葉も同じ理由かもしれませんよ。今度調べてみます。

投稿: そよかぜ | 2009年6月23日 (火) 23時28分

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