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2009年6月30日 (火)

クマノミズキ

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 ミズキとクマノミズキ(上の写真)、遠目にはたいへんよく似た木ですが、花の時期は、かなり違います。 金剛山ではミズキの花は、山麓では5月下旬、山頂付近で6月上旬、クマノミズキの花は山麓で6月下旬、山頂付近で7月上旬、ほぼ1ヶ月遅れです。
 花の一つひとつは小さく、花弁4、オシベ4、メシベの根元には花盤があり、蜜を分泌しています。

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 上で、遠目には似ていると書きましたが近づけばはっきり区別できます。 ミズキの葉は互生ですが、クマノミズキの葉は対生です。
 葉腋には芽があります。 この芽が伸びて枝になります。 ですから、対生の葉を持つ木の枝も対生になります。 もっとも日当たりの様子などで枯れ落ちる枝も出てきますから、ある程度太い枝になると、枝が対生というのは当てはまらない場合も多くありますが、少なくとも細い枝では対生になる場合が多くなります。
 なお、花序の枝は、向かい合わせの腋芽が伸びたものでもなく、上の話とは無関係で、対生ではありません。

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 花序の枝は、花の終わった後は実をつけ、秋には枝サンゴのように美しい色に染まります。(詳しくはこちら

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2009年6月29日 (月)

アイノカツオゾウムシ・ハスジカツオゾウムシ

 色が鰹節に似たゾウムシで、○○カツオゾウムシという、何種類かのグループがあります。 今日はそのうちの、アイノカツオゾウムシ(?)とハスジカツオゾウムシです。

 アイノカツオゾウムシの「アイノ」は「アイヌ」が訛ったものといわれていています。 よく似た種類に、ナガカツオゾウムシがいるのですが、ナガカツオゾウムシは上翅端1/3から細くなっているようですし、写真の個体は、金剛山(といっても、標高500m位の所)で撮ったことや、ヨモギの葉にいたことから、アイノカツオゾウムシとしておきます。

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 ハスジカツオゾウムシは、'08年7月26にこのブログの記事にしています。 前回は“スタジオ撮影”でしたが、今回はノアザミの葉の上にいるところを撮ることができました(撮影場所:堺自然ふれあいの森)ので、載せておきます。
 今回の写真に比較すると、前回の写真の体は、黒っぽい色をしています。 じつはカツオゾウムシの仲間の体の色は、地色は黒く、褐色系の色は体の表面にびっしり生えた短い毛の色です。ですから、この毛が取れるにしたがって、次第に黒っぽい色になっていきます。

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2009年6月28日 (日)

ツルアジサイ・イワガラミ

 下はツルアジサイ。 杉の大木に絡んでいました。

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 ツルアジサイは、主にブナ林などの夏緑広葉樹林帯で見られます。 ツルアジサイにはゴトウヅルという別名がありますが、この「ゴトウ」は何でしょうね。 人名か地名か、それとも・・・
 ツルアジサイにもいろいろ変異があって、下の2枚は、すぐ近くに咲いていた別の株ですが、1枚目は装飾花のガクの幅が広く、ほとんど隙間が無いのに対し、2枚目はガクの間に隙間が目立ちます。

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 分布域も生態的にもツルアジサイによく似た植物にイワガラミがあります。
 イワガラミの装飾花はガクが1枚だけ発達していて、これだけ花の様子が違うのですから、もちろんHydrangea属ではないのですが、比較のために載せておきます。
 花の無い時期には、ツルアジサイとイワガラミは、ほんとうによく似ています。 葉の鋸歯がイワガラミの方が少し荒いのですが、これも遠目では分かりません。
 下のイワガラミの写真では、葉の色が上のツルアジサイの葉の色とかなり違いますが、これは環境条件によるもので、あてにはなりません。

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2009年6月27日 (土)

コアジサイ

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 多くのアジサイの仲間(Hydrangea属)には装飾花があるのですが、このコアジサイには装飾花がなく、全てが両性花です。 花の色は淡碧色からほとんど白色に近いものまで、いろいろです。
 虫を呼び寄せる点においては、装飾花が無い分の視覚的な不利を補おうとしているのでしょうか、香りが他のアジサイよりも強いような気がします。

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2009年6月26日 (金)

ヤマアジサイ

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 野生のアジサイの仲間をシリーズで、ということになると、ヤマアジサイに触れないわけにはいかないでしょう。 それほど普通の野生のアジサイです。 普通すぎて、しかも栽培するガクアジサイに似た貧弱なアジサイですから、あまり注目されません。
 ヤマアジサイは別名サワアジサイといい、日本中のほとんどの内陸の山の湿った感じのある山林に自生するアジサイです。 葉に光沢がありません。
 関東、東海地方のものは、両性花、装飾花とも白色だそうですが、西に進むほど色がつき、近畿でも青やピンクの色がついています。 九州では、もっと多彩でしょう。
 ヤマアジサイは、上に書いたように、あまり人気の無いアジサイでした。 それがここに来て、小型のものが好まれるようになり、園芸的にいろいろな品種がみられるようになりました。 比較的古くからある有名な品種に、「七段花」があります。 また、「クレナイ」は、咲き始めは白い花ですが、次第に真紅に輝いてきます。

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    七段花

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    クレナイ

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2009年6月25日 (木)

ガクウツギ

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 アジサイのシーズンになってきました。 そこでこのブログでも、あちこちで見た野生のアジサイの仲間を、数回連続で記事にしようと思います。
 まずその第1回目はガクウツギ。 名前に「ウツギ」とつきますが、ウツギにはいろいろあることはこのブログでも何回か書いていることで、ガクウツギはアジサイと同じ Hydrangea属に分類されています。 以前記事にしたコガクウツギより大きな花序をつけます。
 ガクウツギは本州では東海道から近畿にかけて、それに四国や九州の温帯下部に分布しています。 葉はアジサイの仲間の中では細長く、色濃く光沢があるので「コンテリギ」の別名があります。
 花はアジサイの仲間としては早く咲き、5月から6月、写真は6月14日に撮ったもので、既に装飾花に囲まれた両性花は散ってしまい、メシベだけになっています。
 装飾花はガク片3片が大きくなります。 通常はこの3片のうち、花序の外側に位置するものが最大になるのですが、写真の花では3片がほぼ同じ大きさです。 神戸市立森林植物園で撮ったものですので、もしかしたら少し他のアジサイの仲間の性質が混じっているのかもしれません。
 6月16日のヤブデマリの記事で、アジサイの仲間(ユキノシタ科)の装飾花はガクが大きくなったもので、ヤブデマリなど(スイカズラ科)の装飾花は花弁が大きくなったものだと書きました。 アジサイの仲間の装飾花はガクが大きくなったものですから、裏から見ても、さらにガクがあるというようなことはありません(下の写真)。 ヤブデマリの記事の写真と比較してみてください。

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2009年6月24日 (水)

サワギク

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 サワギクは、「沢に生えるキク」の意味ですが、沢の縁というよりは、やや湿り気の多い林の中に多いようです。 葉は深く羽状に裂け、他にあまり似た植物はありません。
 今まであまり群生するイメージではなかったのですが、下の写真の場所では、斜面いちめんにサワギクが生えていました。(下の写真のままだと、花が小さすぎて分からないですね (^_^;) 写真をクリックして大きくして見てください)

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 長田武正著の「検索入門野草図鑑」という本があります。 手軽に名前を確認したり、写真を楽しむのによく見るのですが、この本のサワギクの記載を見ると、「舌状花は7~10個」となっています。 ところが私が見た多くのサワギクの舌状花の数は13~14個です(下の写真)。 気になって他の人のブログやHPを見ても、やはり私が見たのと似た数です。 長田先生はどの地方のサワギクを見て書かれたのでしょうか。 それともサワギクの様子が少し変化してきているのでしょうか。

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※ 以前、帰化植物のナルトサワギクについて書きました。 名前は「鳴門市で確認されたサワギク」ということですが、似ているのは黄色い花だけで、葉が裂けているわけでもなく、印象はまるで違います。

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2009年6月23日 (火)

マタタビ

 6月に山道を歩くと、まるでツル植物が花を咲かせたように、マタタビの白い葉が目立ちます。

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 そのマタタビが花を咲かせ始めました。 マタタビには雄株と両性株(実は雌株? 詳しくは下に書きます)があります。 雄株にはメシベの無い雄花を咲かせ、両性株にはオシベとメシベが揃っている両性花を咲かせます。 メシベの先端は、たくさんの花柱が放射状に開出しています。

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   雄花

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   両性花(雌花)

 マタタビの両性株には花弁のない雌花もつけると、保育社の「原色日本植物図鑑」などに書かれています。 すぐ上の写真の左上に半分写っているのがその花でしょう。 しかし、なかなかさんによると、これは単に両性花の花弁やオシベが枯れて取れてしまったものではないかということです(詳しくはこちら)。 上の写真の左上の花では、オシベはまだ残っているが、花弁は枯れて落ちてしまった状態ということになります。 花弁より少し小さな白いものはガクです。
 さらになかなかさんによれぱ、両性花と呼ばれている花のオシベは、見かけは立派ですが、花粉には発芽能力は無く、見かけは両性花ですが、機能的には雌花だということです。

 花は葉の陰に下を向いて咲きます。 これは雨の多くなる時期に花粉を雨に流されてしまわない良いアイデアかもしれませんが、これでは虫たちに目立たず、虫たちに来てもらえません。 葉が白くなるのは、これらの花のかわりに、虫たちの注意を引き、マタタビの存在を虫たちに知らせる“広告用の看板”ではないでしょうか。 花の時期よりかなり早い目に葉が白くなりだしていますが、“ここにもうすぐ花が咲きますよ”という“新装開店のお知らせ”といったところでしょうか。
 なお、この葉が白くなるしくみについては、葉が白い色素を作っているわけでも、葉緑体がなくなっているわけでもありません。 無色の表皮と葉緑体を持つ葉肉との間の細胞の隙間に気体が存在し、水分の多い細胞と気体の屈折率が異なるために光が乱反射され、白く見えるのです。 このことは、爪で葉の表面をしごくと、気体が周辺に移動し、緑に戻ることで分かります。
 上記の気体の発生は、光合成の盛んな葉で起こっているようです。 つまり、よく光の当たる元気な葉、つまり外からよく見える葉が白くなるわけで、苞のように花が近くにある葉が変化するのではありません。 しかしこのことは、マタタビの存在を知らせる“広告”としては、とても有意義ではないでしょうか。

 マタタビにはいろんな薬効成分があります。 木天蓼(もくてんりょう)と呼ぶ生薬にされるのは、マタタビタマバエが花に寄生してできる虫えい(=虫こぶ=ゴール)ですが、正常な果実もマタタビ酒の原料とされます。 なお、木天蓼は虫えいですので、雄株の雄花にもできます(というより、雄株の方が多いようです)。
 ちなみに、マタタビという名前は、疲れた旅人がマタタビの果実を食べると疲労が回復し、また旅ができるということからきているとする説が有名ですが、他にも、上記のように虫えいと正常な果実との2種類の“実”がみられることから、「またつ実」が訛ったとする説や、牧野富太郎博士は、アイヌ語の「マタタヌブ」が訛ったとする説を書かれています。 いずれも薬効成分が関係しているようです。
 「猫にマタタビ」と言われるのも、マタタビに含まれているマタタビラクトンとアクチニジンという成分が猫科の動物に恍惚感を与えるようで、ネコ科の動物であるトラやライオンにも有効なようです。

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2009年6月22日 (月)

スジグロシロチョウの産卵

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 写真はスジグロシロチョウのメスの夏型です。 エゾスジグロシロチョウという種もスジグロシロチョウにたいへんよく似ていて、どちらも北海道から九州までいるのですが、スジグロシロチョウのメスの夏型では、翅の表の黒色部が強く現れ、後翅の裏側は、黒色部は薄く、黄色みを帯びています。
 このスジグロシロチョウが、イヌガラシの葉の裏に産卵していました(下の写真)。 腹部を持ち上げ、イヌガラシの葉の裏に押し当てています。

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 その葉の裏を見ると、既に産み付けられている卵もありました。 下の写真の右端の卵は産み付けられてから時間が経過し、色が変わってきています。 写真の左端には幼虫もいます。 既に孵化したスジグロシロチョウの幼虫でしょうか。

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 下はスジグロシロチョウの幼虫の食草のひとつであるイヌガラシです。

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2009年6月21日 (日)

スイカズラの受粉とクマバチの盗蜜

 このブログの6月4日の記事でスイカズラについて書いたところ、夕菅さんは、庭に植えてあるスイカズラについていろいろ調べられて、ご自分のブログに記事を載せられました。
 その中で、実がつかないと書かれていましたので、それは受粉していないからで、人工授粉はどうですかとお勧めしたところ、既にメシベの柱頭に花粉がついていたこと、それまで気がつかなかったが、ほとんど毎朝のようにクマバチがスイカズラの花に来ていることを発見されました。
 しかし、スイカズラの花のつくりから期待される花粉媒介者は、下の写真の水色のような昆虫ではないでしょうか。 クマバチがうまく花粉媒介できるのか、気になりました。

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 そこで、花の横から、クマバチと花の関係が分かる写真をお願いし、送っていただいたのが下の写真です。

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 クマバチはスイカズラの花筒の上に馬乗りになっています。 そして、この写真でははっきりしませんが、花の外から、口を直接蜜のある所へ突き刺しています。 クマバチの去った後の花には、大きな傷が残っています(下の写真)。

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 クマバチはよくこんなことをします。 花が花粉媒介してもらおうと準備した蜜を、花が想定した方法とは別の方法で奪い取るこの行動を「盗蜜」と呼んでいます。 下の写真も夕菅さんに送っていただいたもので、チェリーセージのガクの上から、クマバチが口をブスリと差し込んでいます。

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 さて、話をスイカズラの受粉に戻します。
 夕菅さんはスイカズラのメシベに花粉がついていて、それはクマバチによるものだと考えられました。 たしかに2枚目のクマバチの馬乗りの写真で、オシベがクマバチの腹に接しています。 クマバチの大きさとスイカズラの花の大きさからして、このように馬乗りになる前に、クマバチがスイカズラのメシベに触れることも十分考えられるでしょう。
 しかし一方、私の6月4日のスイカズラの記事で、スイカズラの花では、オシベの葯ととメシベの柱頭が自然に接して、花粉が柱頭につくことがしばしば見られることを書きました。 たぶんこの時期にはメシベには受粉能力はなく、自家受粉を避けているのだと思っています。
 夕菅さんが観察されたメシベの柱頭についていた花粉は、クマバチによるものなのか、クマバチに無関係についたものなのか、クマバチは昨年も来ていたが気がつかなかったのか、今年初めて蜜源があることを学習して毎日来るようになったのか、そして果実はできるのか、夕菅さんの庭のこれからがたいへん楽しみです。
 自然の中での花と昆虫の関係は、ほんとうにおもしろいものです。 そして、野に咲く花が庭にあれば、その関係を頻繁に観察することが容易です。 ただ、庭という特殊な環境で、野外と同じ訪花昆虫が来るのかという事は注意しておくことは必要ですが・・・

◎ この記事に使用した写真は、1枚目を除いて、全て夕菅さんの撮影によるものです。 写真を使わせていただいたことを感謝します。

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2009年6月20日 (土)

モリアオガエル

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 6月14日に行った神戸市立森林植物園では、モリアオガエルだけではなく、その卵塊も、正門前の池や沢の池の水面上にせり出した木の枝や、長谷池の水辺のカキツバタになど、いろんな所で見られました(下の写真)。

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 モリアオガエルは、ニホンアマガエルやシュレーゲルアオガエルに似てはいますが、それらよりはずっと大型ですので、一目で分かります。 でも、写真では大きさが分かりにくいので、一応の区別点を書いておくと、ニホンアマガエルとは目から耳にかけての黒い帯模様が無いことで区別できますし、シュレーゲルアオガエルとは虹彩が赤褐色であることで区別できます。
 指先には大きな丸い吸盤があり、木の上での生活に適応しています。 背中側の地色は緑ですが、地方によっては褐色のまだら模様のある個体が見られます。

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 多くのアオガエル科のカエルは、粘液を泡立てて作る卵塊の中に産卵する習性を持っているのですが、日本にいるアオガエル科のカエルはモリアオガエルとシュレーゲルアオガエルだけで、シュレーゲルアオガエルは地中で卵塊を作って産卵しますので、目立つ泡の卵塊を作るのはモリアオガエルだけということになります。

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2009年6月19日 (金)

コウホネ

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 上は神戸市立森林植物園の長谷池で撮った、アサザに囲まれて育つコウホネです。
 コウホネは水位変動の少ない浅いため池など、落ち着いた環境を好みます。 アサザに比較すれば、ずっと逞しそうなコウホネですが、やはり減少しつつある植物です。
 根茎は白く、肥大し、葉を出しながら横にはっていきます。 コウホネ(河骨、川骨)の名前は、この白い根茎が葉を落として凸凹した様子を、動物の背骨に見立てたものでしょう。
 葉は、水面から飛び出したやや厚くてつやのある葉が目立ちますが、薄くてヒラヒラした水中葉もあり(下の写真)、冬には水中葉だけが残ります。

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 花は6月から9月頃、長い花茎の先端に1つだけ、黄色い光沢のある花を咲かせます。 花弁のように見える外側の5枚はガクで、その内側にたくさんあるリボン状のものが花弁です(下の写真)。 中央にはメシベがあり、それを多数のオシベが幾重にも取り囲んでいます。
 オシベの様子を見ていると、外側から順に、花粉を出し尽くしては倒れていき、結果として1つの花が長期間花粉を出し続けるつくりになっているのではないかと思われますが、確認はできません。 もっと身近な所に咲いていれば、同じ花の変化を連続して観察できるのですが・・・。
 下の写真では、花粉を出しているか、またはこれから花粉を出すであろうと考えたオシベを「若いオシベ」と、花粉を出してしまったと考えられるオシベを「古いオシベ」と表現してみました。

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2009年6月18日 (木)

アサザ

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 土曜日に神戸市立森林植物園の池にアサザが咲いているという情報を得て、日曜にさっそく見に行ってきました。
 アサザは、ミツガシワ科に分類される多年性の浮葉植物ですが、環境省レッドリストの絶滅危惧Ⅱ類にランクされています。 かつては北海道から九州までの各地の湖沼やため池に見られた植物で、1株が数百メートルの大きさを占有するまでに地下茎を伸ばして成長できる植物なのですが、汚染などによる水環境の悪化とため池などの減少、水位の人為的コントロールなどで、水環境は急激に変化し、アサザはそれに耐えられなかったようです。
 アサザの種子は、水中では発芽が抑制され、光の遮られる土壌中でも発芽できません。 また、寒さで発芽が促進されます。 つまり、発芽には四季による水位の変動が必要で、春先の水位低下で種子が空中にさらされることが必要になります。 アサザの語源は、生育する場所である浅沙(アササ=水深の浅い所)からきているとする説があります。
 また、酸性の湖沼では生育できないことも知られています。 さらに、アサザには花柱の長いタイプの花を咲かせる株と花柱の短いタイプの花(写真の花)を咲かせる株の2種類があり、この異なる花の間で花粉のやりとりが行われると良質な種子ができるのですが、減少したアサザにあって、この2種類の株が揃っているのは、もう霞ケ浦しか残っていないのではないかと言われています。 なお、アサザの花のタイプには、もうひとつ、前述の中間型の花があり、この花では自家和合性が高いことも知られています。

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 アサザの花は朝開き、午後にはしぼみだします。 いわゆる1日花で、柔らかい花冠の裂片の縁は、房のように細かく裂けています。 オシベは5本、メシベの柱頭は深く2裂し波を打ったようになっています。

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2009年6月17日 (水)

ナガバモミジイチゴ

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 ナガバモミジイチゴは崩落地や山道の周辺などでよく見るキイチゴです。 葉の形には変異が大きいものの、赤いキイチゴ類の多い中での橙黄色の果実は特徴的で、あまり迷わず同定できます。 果実は酸味が利いていて、嫌味の無いあっさりとした甘さです。 が、枝にたくさんある刺には要注意です。
 下の写真で、細く黒っぽい糸状のものはメシベの花柱のあとです。

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 花は4月頃、葉の展開直後に、白い花を下向きに咲かせます。

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2009年6月16日 (火)

ヤブデマリ

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 アジサイの季節になってきました。 民家の庭や公園などにはアジサイやガクアジサイが、山に入ればアジサイと同じ Hydrangea属の、ガクアジサイに似たガクウツギなどが咲いています。
 ところでこの記事の写真、よくアジサイの仲間に間違えられるのですが、全く違うグループのヤブデマリです。
 ヤブデマリは山の谷筋など、水分の多い所でよく見られます。 葉は対生、花序の縁には装飾花として機能している無性花が、中心部には両性花があります。 つまり、虫を引き寄せる役目をもった花と、花粉を媒介してもらって種子を形成する花とに“分業”しています。 と書くと、ますますガクアジサイに似てきますね・・・
 ところが、ガクアジサイなどのアジサイの仲間はユキノシタ科に分類されているのに対し、ヤブデマリはスイカズラ科に分類されています。
 科が違うということは、かなりの違いです。 どこがどう違うのか?
 じつはよく見ると、ヤブデマリはガクアジサイと全く違う花のつくりをしています。 ガクアジサイの装飾花は4枚のガクが大きくなっています(だからガクアジサイというのではないことはこちら)。 ところが、ヤブデマリの装飾花は、大きい花弁が2枚と小さい花弁が2枚の、計4枚の花弁を持つように見えますが、よく見ると、もう1枚、たいへん小さな花弁があります(下の写真)。 そして、これらの花弁は基部で互いにくっつきあっています。 つまり、ヤブデマリの花は、切れ込みの深い合弁花です。

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 上の文では数を中心に書きましたが、同時に、ガクアジサイの装飾花はガクが大きくなっているが、ヤブデマリの装飾花は花弁が大きくなっていると書きました。 お気づきでしょうか。
 つまり、ガクアジサイとヤブデマリでは、大きくなって目立って虫をひきつけようとしている部分がガクと花弁、全く違う部分なのです。
 ヤブデマリの装飾花の白い目立つ部分がガクではなく花弁だという証拠は?
 これは簡単に証明できます。 裏から見れば、ちゃんとガクがあります(下の写真)。 もちろんガクアジサイの装飾花を裏から見ても、さらにガクがあるということはありません。

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2009年6月15日 (月)

ミヤマナルコユリ、オオナルコユリ

 ナルコユリ、アマドコロ、ミヤマナルコユリ、オオナルコユリなど、アマドコロ属(Polygonatum属)にはよく似たものが多く、さらに園芸的に改良が加えられて植えられたりしていて、区別するのはなかなか難しいものです。 この記事も最初はミヤマナルコユリをナルコユリとして載せていましたが、コメントで指摘していただき、調べなおしました。

 ミヤマナルコユリ
   ('09年6月6日、金剛山にて撮影)
 ミヤマナルコユリはナルコユリに似ています、茎はに稜があり(下の青い矢印)、高さは30~60㎝と、そんなに大きくなりません。 葉は長楕円形~広楕円形で、幅はナルコユリより広いのがふつうです。 花柄は2~3回枝を分け、その先に白い筒状の花をつけるのですが、この花序は、ナルコユリやアマドコロなどが茎の下できれいに整列しているのに対し、ミヤマナルコユリは左右に広がります。
 また、ナルコユリ、ミヤマナルコユリや次のオオナルコユリでは、花筒の基部と花柄の境に、花筒が狭まった短い緑色の部分があります(下の写真の赤い矢印)。 これはアマドコロには見られない性質なので、少し小さいですが、便利な区別点です。

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 オオナルコユリ
   ('09年6月14日、六甲高山植物園にて撮影)
 山にはナルコユリに似て、明らかに大きさの違うオオナルコユリという別種が見られることもあります。(下の写真:写真でうまく大きさが伝わるか、心配ですが・・・)
 きっちり区別しようとすれば、ナルコユリの葉の下面脈上には突起があるのですが、その突起がオオナルコユリには見られません。

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※ アマドコロの写真はこちらに載せています。比較してみてください。

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2009年6月14日 (日)

ハサミムシ

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 写真はハルジオンにいたハサミムシ(の仲間)です。 ふだんは落ち葉の下などでよく見るのですが、この日はハルジオンに登ってきていました。
 ハサミムシの仲間は革翅目(かくしもく)に分類されます。 退化した翅を持つもの、翅のないもの、動物食性のもの、植物食性のものなど、日本には20種以上もいるのですが、みんな体色は地味で互いによく似ていますので、「ハサミムシ」という種名を持ったものもいるのですが、ここで使っている「ハサミムシ」は「ハサミムシの1種」の意味だと理解してください。
 ハサミムシの特徴は、なんといってもお尻のハサミ。 このハサミは武器として使いますが、空気の振動を捉えることもできるようです。 つまり“耳”としても使っているとのことです。
 その他、ハサミムシには、母親が卵や子どもの世話をするという、昆虫の仲間としては珍しい習性もあります。

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2009年6月13日 (土)

クリンソウ

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 クリンソウは湿地に生えるサクラソウ科の植物です。 大きく花も美しいので、野生のものは山草として掘り取られて激減し、一方では園芸的に改良されて、花の色も濃い赤から白に近いものまで、いろいろなものが作られています。
 写真のクリンソウは金剛山で撮ったものですが、これは野生種でしょう。 金剛山の山頂付近の神社や「ちはや園地」には園芸種のクリンソウが育てられていますが、金剛山の一部の渓流沿いには、園芸種のクリンソウが登場する以前から、クリンソウがありました。
 金剛山は花崗岩の山で、花崗岩は風化され真砂土となります。 写真の場所は、谷が真砂土と腐葉土で埋められたような場所で、フキなども育っています。

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 クリンソウの花も、他の多くのサクラソウの仲間同様、花柱の長い花をつける株と花柱の短い花をつける株があり、下の花は後者です。オシベが規則正しく並んでいますが、メシベの柱頭は見えません。
 オシベにピントが合っているので、サクラソウ科の花の特徴を。
 ガクが5、花弁が5、オシベが5という花は多いのですが、この場合、多くの花では、ガクと花弁は互い違いの位置に、花弁とオシベも互い違いの位置につきます。 ところが写真で分かるように、クリンソウの花では、5本のオシベは花冠の裂片に重なるように配列しています。 これがサクラソウ科の特徴の一つです。

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 下は果実。 サクラソウ科の果実にはこのような形のものが多いようです。 サクラソウ科のオカトラノオの果実ともよく似ています。

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 クリンソウの「クリン」は「九輪」からきています。 九輪とは、お寺の多重塔の屋根の上にある「相輪」の中ほどを占める9つの輪のことです。
 下は堺市南区にある法道寺多宝塔です。

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2009年6月12日 (金)

コガタカメノコハムシ

 金剛山で見つけたコガタカメノコハムシです。 食草であるボタンヅルの葉の裏にくっついているところを、上から写しました。

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 下は別の葉に移動していた個体を前と横から撮ったものです。 少しだけ顔と足が見えています。 上翅には大小のたくさんの凹みがあり、横から見ると、カメノコハムシの仲間にしては、かなり高く盛り上がっています。

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 ハムシの仲間は種類が多く、このブログでも既に何種類も記事にしています。 左の「サイト内検索」で「ハムシ」で検索しても、たくさんの記事がヒットします。 カメノコハムシの仲間にも何種類かいて、以前にはイチモンジカメノコハムシについて記事にしました。
 これらの種名を調べるにあたっては、大阪市立自然史博物館のホームページから、「研究室」→「しやけのドイツ箱」と進み、その中にある「インターネット・ハムシ図鑑」は、現在作成中のページですが、よく利用させてもらっています。 そこに、カメノコハムシに関しては絵解き検索があり、12種類のカメノコハムシが検索できます。 
 いちどこのページの写真を使って、「カメノコハムシ絵解き検索」を体験してみませんか。 目的の虫にうまく行き当たると、ちょっとうれしいものです。

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2009年6月11日 (木)

オオバアサガラ

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 今年の6月6日の金剛山は、オオバアサガラの花のちょうど見ごろでした。 花の時期に金剛山に行くと、オオバアサガラがあちこちにあるのが分かります。 既に花の終わった木もあれば、まだつぼみしかつけていない木もありましたが、多くのオオバアサガラは半分が花で半分はツボミの状態。 この時期がいちばん美しいのではないでしょうか。

 オオバアサガラに近い木に、アサガラがあります。 名前は枝が折れやすく、樹皮が糸状に剥げる様子を麻の茎に例えたものです。
 アサガラとオオバアサガラの区別点は、アサガラの果実には5翼があるのに対し、オオバアサガラの果実には10稜もあり、ほとんど円形に見える点ですが、この区別点は花の時期には使えません。
 もうひとつの区別点は、名前のとおりオオバアサガラの葉は大きく、アサガラの葉の葉脈は5~8対であり、葉脈が葉の裏に大きく隆起しないのに対し、オオバアサガラの葉脈は8~12対あり、葉の裏を見ると、細かい脈まで隆起しています。 下の写真では、葉の裏に西日が当たり、その様子がよく分かります。
 その他にもアサガラの花序は横に広がり、写真のような長い房状にはなりません。

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オオバアサガラはエゴノキ科に分類されています。 木の成長は速いほうですが、上述のようにもろいので、水分を容易に得られて風当たりの強くない谷筋に生育します。 金剛山で見たオオバアサガラも、すべて渓流の横でした。
 花は5枚の花弁に10本のオシベがあります。 花弁もオシベもほとんど離生していますが、基部ではわずかにくっついています。
 オシベの花糸の内面には長毛があります。 白い花弁に白い花糸、長毛も白いとなれば分かりにくいのですが、下の写真では、どうにかその様子が写っています。

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2009年6月10日 (水)

アトボシアオゴミムシ

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 金剛山のロープウェイに至る道路の側溝で、アトボシアオゴミムシを見つけました。 名前のとおり、側溝にたまっていたゴミの中に潜んでいたものを、側溝に足を踏み入れたものですから、本来は夜行性なのですが、驚いて飛び出してきたようです。 セメントで固められた壁面を逃げ回るのですが、落ち葉の下に潜られる心配もなく、飛んで逃げられる心配もなく、写真を撮るには絶好のチャンスでした。
 アトボシアオゴミムシは、山地に多い、綺麗な色彩をしたゴミムシです。 前胸部は緑色から、光の具合によっては赤みを帯びた金属光沢があり、前翅は黒褐色で、後方には特徴的な1対の白い紋があります。
 ゴミムシ科のなかでも、アオゴミムシの仲間は、眼の内側に、1本の長い毛があるのが特徴です(下の写真)。

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2009年6月 9日 (火)

バイカウツギ

 いろいろな科で「○○ウツギ」という名の木がある(詳しくは「ミツバウツギ」の記事を参照)なかで、このところ連続で、ユキノシタ科のウツギとマルバウツギについて、記事にしました。 今日はもう1種、これらによく似たバイカウツギを取り上げます。

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 ただし、ウツギとマルバウツギは同じDeutzia属であるのに対し、バイカウツギは、ユキノシタ科であることには変わりはありませんが、これらとは異なる属( Philadelphus属 )です。 ですから、遠目にはウツギなどによく似ていても、花のつくりはかなり違います。
 まず、花弁はウツギなどが5枚であるのに対し、バイカウツギの花弁は4枚です。 それに、ウツギなどのオシベは10本であるのに対し、バイカウツギのオシベは20本前後です。
 花にはたくさんの小さな虫が来ていました。

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 今回、ウツギ、マルバウツギ、バイカウツギを比較して記事にしようと、少しまじめに写真を撮ったのですが、そのなかでひとつ気づいたことがあります。 それはバイカウツギの花の大きさです。
 手元の図鑑では、バイカウツギの花の径は、ウツギより大きい2.7mmとあります。 ところが、バイカウツギのたくさん生えている所で見てみると、バイカウツギの花はかなり大きさに変化があるようです。 これはそれぞれの木の遺伝的性質の違いというよりは、日当たりなどの環境要因の違いであるような気がしました。

 5月23日のミツバウツギの記事に、6月6日に撮ったミツバウツギの果実の写真を追加しておきました。

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2009年6月 8日 (月)

マルバウツギ

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ウツギの仲間(ウツギと同じDeutzia属)でマルバウツギという植物があります。 花の咲き始める時期もほぼ同じです。 6月6日の金剛山ではウツギとマルバウツギが枝を交えて咲いている所もありました。
 ウツギと葉を比較すると、対生であることなどは共通ですが、マルバウツギの葉は、名前のとおり、ウツギの葉よりも丸っぽい葉です。 それにウツギの葉には短い葉柄があるのですが、マルバウツギの葉は、少なくとも花序の下では無柄です(下の写真)。

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 花は私の印象では、ウツギより少し花が小さく、花弁の開き具合はウツギより大きいように思います。 でも、もっとはっきりした違いがあります。 それはオシベの花糸の様子です。
 ウツギでは花糸が翼状に幅広くなっていて、葯のすぐ下では左右に大きく角状に張り出していることを、ウツギの記事で書きました。 マルバウツギでは、花糸が幅広くなっているのは共通なのですが、“なで肩”になっていて、葯のすぐ下の角状の出っ張りがありません(下の写真)。

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 念のため、ウツギの花糸の角状の出っ張りを、赤い矢印で示しておきます(下の写真)。 比較してみてください。

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2009年6月 7日 (日)

イシガケチョウ

 昨日の記事で、ウツギの花にはいろいろな昆虫が来ると書きましたが、蝶の仲間も吸蜜に訪れます。
 '09年6月6日の金剛山で、イシガケチョウがウツギの花に来ていました。 白い花に白がベースの蝶ですので、見落としそうでした。

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 イシガケチョウはイシガキチョウとも呼ばれています。 南方系のチョウで、「そよ風に乗って」で連続記事にした石垣島では、何度も見ましたが、高い所を飛んでいるものばかりで、撮影はできませんでした。
 その南方系のチョウが、地球温暖化の影響か、近年は少しずつ分布を北に広げつつあります。 私が金剛山ではじめてこのチョウに出会ったのは、'99年7月11日でした。
 幼虫はイヌビワガジュマルなど、イチジクの仲間の葉を食べて育ちます。

 6月6日の金剛山でウツギの花を訪れているチョウとしては、上記のイシガケチョウの他、アサギマダラアサマイチモンジ、クロアゲハなどを観察しています。

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   アサギマダラ(メス)

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   アサマイチモンジ

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2009年6月 6日 (土)

ウツギ

♪ 卯の花の匂う垣根に、ホトトギス、早も来鳴きて・・・と歌われている「卯の花」は、もちろんウツギ。 堺市南区の鉢ヶ峯寺ではウツギが咲き、ホトトギスの声も聞こえてきます。
 落葉樹であるウツギは冬に葉を落とすので、最近はあまり見なくなりましたが、刈り込みに強く白い花をいちめんにつけるウツギは、垣根にもよく使われていたようです。

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 ウツギの花はいちめんに咲くことに見とれてしまいがちですが、遠慮がちに開く一つひとつの花をじっくり見ても、なかなか趣があります。 10本のオシベの花糸は、葯のすぐ下で左右に角を出すように広がり、そのまま翼状に下までながれていきます。
 拡大してみると、若枝、花柄、ガクなどは、たくさんの星状毛に覆われていて、そこに開出毛も混じります。

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 歌には「匂う」とありますが、たくさんの花に近づいても、そんなに強い香りはありません。 「匂う」は咲き誇る様を表現したものと理解すべきでしょう。 でも、これだけの花が咲けば、いろんな虫たちが集まります。
 ウツギの花にいちばん多く見られるのは、花蜂の仲間です。

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 鉢ヶ峯寺での撮影(5月30日)では、マドガクロウリハムシなども来ていました。

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 ウツギの花の蜜を求めてやってきたのか、花に来る虫を狙ってやってきたのか、オオメカメムシは口吻を2mmほどの小さなゾウムシにみごとに刺しこんでいました。

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2009年6月 5日 (金)

ヒメクロトラカミキリ

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 5月23日に堺自然ふれあいの森で撮った、体長6~7mmの小さなカミキリです。 ヒメクロトラカミキリだと思うのですが、ヒメクロトラカミキリの特徴である前胸背板基部の両側の白色の部分がありません。 カミキリの種類もたいへん多いので、間違っているかもしれません。
 とにかく、これらのトラカミキリの仲間は、幼虫は伐採された木や枯木を食べて成長し、親は蜜を求めて花に集まります。 写真はギシギシの仲間の葉の上で撮っていますが、たまたま休憩中だったのでしょう。 葉は大きく食べられていますが、もちろんこのヒメクロトラカミキリが食べたのではないでしょう。 どこかの花に顔を突っ込んできたのでしょう、顔の前面は花粉で黄色くなっています。

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2009年6月 4日 (木)

スイカズラ

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 スイカズラは、いろんな別名を持っていて、黄色と白の花をつけるところから「金銀花」、冬でも寒さに耐えて葉をつけていることから「忍冬(にんどう)」と呼ばれています。 ちなみに、生薬として使われる「金銀花」は、スイカズラのつぼみを集めたもので、抗菌作用や解熱作用があるとされています。
 花弁は根元は筒状になっていますが、先の方は上下2枚の唇状に分かれていて、さらに上唇は4裂しています。
 スイカズラの名は「吸い葛」の意味。 花を口にくわえて蜜を吸うところから、というのですが、花を引っ張ってちぎったままでは、花筒とガクがしっかりくっついていて蜜は閉じ込められたままで、いくら吸っても蜜は出てきません。 ガクと花筒を分離させても、それほどたくさんの蜜を持っているわけではありません。 昔の人にとっては、甘いものは貴重だったのですね。
 黄色と白の花をつけることについては、花をよく見ると、白い花の方が咲いて間もないことが分かります。 花の白い時期には、メシベもオシベもしっかり前方に伸びていて、オシベはたくさんの花粉を出しています(下の写真)。

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 この時、しばしばオシベの葯ととメシベの柱頭が接しています(下の写真)。 もしこの時既にメシベの柱頭が受粉能力を持っていて、自己の花粉でも花粉管を伸ばすことができるなら、間違いなく自家受粉が成立するでしょう。 でもそれは、スイカズラの果実のできる数からして、ありえないことだと思います。 この時期のメシベにはまだ受粉能力が無いのか、自家不和合性による自家受粉を防ぐ仕組みがあるのではないでしょうか。 この時期のメシベの受粉能力については、いつか調べてみたいものです。

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 花は時間と共に黄色くなっていきます。
 花の色の変化についてはこちらに書いています。 昆虫が花に止まることが刺激になって花の色が変化する植物もあるのですが、スイカズラの場合は2つの花がセットになって咲き、この2つの花がほぼ同じ色であることから、黄色くなる要素は時間だけだと思います。
 この黄色い時期の花を見ると、オシベは花粉を出し終えて、下に垂れています(下の写真)。 この様子からすると、花の黄色い時期は雌性期だと思われるのですが、それでは花の白い時期は雄性期なのかということになりますが、それにはメシベに受粉能力が無いことを証明しなければなりません。 それに、雌性期と雄性期がはっきり分かれているのなら、両方の時期に昆虫に訪花してもらう必要があり、そのための蜜の量はどうなのかということも気になります。

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 夕菅さんが、自宅の庭のスイカズラに来ているクマバチについて、いろいろ調べてくださいました(この記事のコメント)。 そのことについて、こちらの記事に、のとりあえずのまとめとして載せています。

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2009年6月 3日 (水)

ガンピ

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 ガンピは、コウゾやミツマタほど有名ではありませんが、和紙の原料です。 なぜコウゾやミツマタほどには知られていないのか、ガンピで作られた紙は質が悪いのかというと、その逆で、繊維はコウゾの1/3ほどしかなく、細いのですが、それがかえって緊縮した紙質となり、粘性もあって、光沢のある平滑で半透明の紙を漉くことができます。 ガンピから作られた鳥の子紙は、平安時代の女性たちには、かな文字を書くのに最もふさわしい紙として愛用されました。
 ではなぜそんなに知られていないのか、じつはガンピは栽培が難しいのです。 写真のガンピは、たまたま堺市南区の畑と林の境にあったものですが、太い木にはなっていません。 私の家の近くでガンピをよく見るのは、雨が降ってもすぐ流れ去ってしまうような、里山の痩せ尾根です。 ガンピはこのような痩せ地に生育する植物で、畑などでの栽培に適さず、必然的に大量には入手できないものとなります。 最澄が唐に渡る時には筑紫の斐紙(雁皮紙)を土産として持参したというほどの、貴重な紙であったわけです。

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 ガンピは、本州では静岡県の伊豆より西、石川県の加賀市より南、それに四国や九州に分布する、暖地を好む植物です。
 花を見て分かるように、ジンチョウゲ科の植物です。 ミツマタも同様ですが、ジンチョウゲ科の植物の花弁は退化していて、筒状の花弁のように見えているのはガクです。 ガク筒の外側は多くの毛で覆われています。

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2009年6月 2日 (火)

シンジュサン

 家の近くの緑道(泉北ニュータウンにある歩行者専用道)を散歩の途中、ふと見上げると、ヒマラヤシーダにシンジュサンがとまっていました。 翅はかなりボロボロですが、翅の表からも裏からも撮ることができました。

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 シンジュサンは、天然記念物になっている沖縄のヨナグニサンを除けば日本最大のガです。 ちなみに、ヨナグニサンはシンジュサンに近い種類で、翅の模様も似ています。 とにかく、そんな大きな蛾が町の中にもいることは、うれしいことです。
 シンジュサンは、幼虫がシンジュ(=ニワウルシ)の葉を食べる、繭から糸のとれる蛾というところからの名前ですが、幼虫が食べるのはシンジュに限らず、いろんな樹木の葉を食べます。
 これだけ大きな蛾の幼虫ですので、幼虫も大きく、しかも卵はまとめて産みますので、幼虫は狭い範囲にたくさんいて、葉を食い荒らすという状況になります。 このシンジュサンはどこで発生したのか、どのくらいの距離を飛んできたのか、興味のあるところです。

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2009年6月 1日 (月)

キツネアザミ

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 アザミのようだがトゲが無い。 狐に騙されたようなアザミというので、キツネアザミです。
 分類学的にも、キツネアザミの学名は Hemistepta lyrata で、アザミ属(Cirsium属)とは区別されています。
 下は花(頭状花序=頭花)の拡大。 頭花はたくさんの筒状花からなっていますが、小花(1つひとつの花)はアザミの仲間のようにシャキッとしていません。 総苞片の先には角のような出っぱりがあり、出外側の総苞片ほどこの出っぱりは大きくなっています。

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 この時期、早く咲いた花は、もう種子(正確には痩果)になっています。 アザミの仲間の冠毛は羽状に枝を分けるのですが、キツネアザミの冠毛も、アザミでないにもかかわらず、ちゃんと羽状に枝を分けています。 こんなところまで似ているんですね。

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 キツネアザミは、日本では本州以南の農地の周辺や農耕放棄地でよく見られますが、朝鮮・中国・インド・オーストラリアなど温帯から暖帯に広く分布していて、古代に農耕と共に日本に入ってきた史前帰化植物だと考えられています。

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