ツネノチャダイゴケ
山でよく木で階段を作ってある場所がありますが、金剛山で、その横木にツネノチャダイゴケが生えていました。
「チャダイ」は「茶台」で、茶托(ちゃたく)の昔の言い方でしょう。 小さなものによく「コケ」という名前がつけられていますが、チャダイゴケの仲間は「腹菌類」とよばれているキノコの仲間です(昨日の記事参照)。
いわゆる一般的なキノコは「帽菌類」と呼ばれていて、一般的には傘の裏など、外に接する所に胞子を作るのに対し、「腹菌類」のキノコは組織の内部で胞子を作り(「被実」といいます)、胞子が完成するとキノコの頂に穴が開き、そこから胞子が放出されます。
チャダイゴケの仲間は腹菌類の中でも変わっています。 上の写真で、茶台のような「殻皮」の中に円盤状のものが入っていますが、これを「小塊粒(ペリディオールまたはペリジオール)」とよび、胞子はこの中に詰め込まれています。
胞子が広がるしくみについては、雨が降ると小塊粒が雨粒に弾き飛ばされ、近くの草などにくっついた小塊粒が草と共に草食獣に食べられ、草食獣の糞と共に胞子が散布される、と考えられています。
チャダイゴケの仲間の多くでは、ファニクルスと呼ばれるへその緒状のものが見られ、これで殻皮と小塊粒が結合されています。 下の写真では、多くの小塊粒が既に“茶台”から飛び出していて、へその緒が残っているのが分かります。
このへその緒(ファニクルス)は、どんな役割をしているのでしょうか。 壁を伝って流れ込むような静かな雨水の動きでは小塊粒が流れ出ないようにしているのでしょうか。 未熟な小塊粒をしっかりつなぎ止めておくためのものでしょうか。 それとも、まさにへその緒のように、小塊粒へ栄養分を送り込むためのものなのでしょうか。 もしこのあたりの情報情報がありましたら、ぜひ教えてください。
もう一度、最初の写真を見ていただくと、小塊粒の周囲に小さな虫がたくさんいます。 下はもう少し大きく写したものですが、この虫はトビムシの仲間です。 トビムシは土中生物の一種で普段は落ち葉などの下で分解者として働いているのですが、これだけ集まっているのは偶然とは考えられません。 いったい何を食べに集まっているのでしょうか。
もしかしたら、子実体の組織の中で作られた小塊粒の表面についている組織の残りをトビムシがきれいに食べることによって小塊粒の表面がツルツルになり、雨粒に弾き飛ばされやすくなるのかもしれません。
チャダイゴケの仲間は、キノコらしからぬユニークな形態をしていて、英語では「 Bird's nest fungus 」、つまり「鳥の巣キノコ」と呼ばれます。 でも、胞子の散布の方法など、ユニークなのは形態だけではありません。 なかなか興味を引かれるかわいいキノコです。
※ ツネノチャダイゴケの幼菌の様子はこちらに載せています。
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コメント
なかなか興味をひく可愛いキノコと聞けば、どんなんやろ?と実物見てみたくなりますわ…
投稿: わんちゃん | 2008年10月24日 (金) 07時42分
> 実物見てみたくなりますわ…
いつでも案内しますよ、と言いたいところですが、キノコは神出鬼没、それがキノコを探す楽しみでもあるのですが・・・
投稿: そよかぜ | 2008年10月25日 (土) 06時25分