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2008年10月31日 (金)

ノアサガオ

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 まだこの時期になっても、私の自宅付近(大阪府堺市)でも、まだこんなアサガオのような花が咲いています。 しかも昼間も・・・ 数年前から近所のあちこちで花を見るようになりましたが、 じつはこれ、ノアサガオの仲間です。
 日本に自生するノアサガオは、伊豆諸島・和歌山以南から熱帯アジア、オーストラリアまで分布する、暖かい地方の植物です。 しかし、私の近所で見るノアサガオは、一つの枝に多数の花をつけることや、花筒が赤くなるなど、日本に自生するノアサガオとは少し違うようです。 園芸店で販売されている苗には、宿根アサガオ、ケープタウンアサガオ、琉球アサガオ、オーシャンブルー、クリスタルブルーなど、いろんな名前がつけられているようです。 地名がついている名前もありますが、それが原産地であるのかは疑わしいでしょう。 たぶんどこかの野生種を元に園芸的に改良が加えられているのだと思います。
 いずれにしても、日本に自生するノアサガオにちかいものですから、温度が高くならないと成長を開始せず、十分成長して花を咲かせ始めるのは夏の終わりになってから、ということになってしまいます。
 このノアサガオは、宿根草で、普通は結実しません。 繁殖は挿し木で行います。 性質は強健で、耐寒性もかなりありそうです。

(以下、11月18日追記)
 さすがのノアサガオも、この時期になると元気が無くなってきているようです。 寒くなってくると赤みが増してきているような気がします。
 ところで、長崎のエフさんに自生のノアサガオと栽培されているリュウキュウアサガオとの比較観察をしていただきました。 結果はこちらからどうぞ。

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2008年10月30日 (木)

インパチェンス(雄性先熟の花)

 この記事は昨日からの続きです。

 インパチェンス(アフリカホウセンカ)の花は雄性先熟なのですが、そのオシベとメシベの交代の様子がおもしろいものです。 日本のツリフネソウなどでも同様のことが起こっているのですが、ツリフネソウよりも観察が容易( 姿勢を低くして花の中を除きこまなくてもいい )なインパチェンスで、その花のつくりを見ていくことにします。
 白い花の方が影ができやすく立体的に理解しやすいので、まずは白い花で・・・
 下は咲いて間もない花の中心部です。 モコモコのフードを被ったような下に花粉が出されています。 このように5本のオシベの葯は癒合して集葯雄ずいとなっています。 メシベはこれらのオシベに覆われていて、全く姿が見えません。 蜜を狙って虫がオシベの下に開いている空間に入ってくると、花粉がその虫の背中につくことになります。

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 時を経て花粉を出し終わると、この癒合していたオシベはポロリと落ちて、メシベがその姿を見せます。 下の写真は、少しピントが甘くなってしまいましたが、メシベの右に、脱ぎ捨てられた集葯雄ずいが転がっています。

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 下はこのメシベを正面から見たところ。 柱頭は花粉がくっつきやすくなるように湿っています。

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 下の赤いインパチェンスの花は、メシベの先から粘液が垂れ下がっています。 蜜は長い距の中に入っているはずですから、これは蜜ではないでしょう。 こんなに粘液を出しては出しすぎではないでしょうか。 でも、こんな花が多いのです。

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※ なかなかさんのブログには、ハガクレツリフネでの上記の変化が載せられています。

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2008年10月29日 (水)

インパチェンス

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 夏から秋にかけて花壇を彩るインパチェンス(和名アフリカホウセンカ)、本来インパチェンス(Impatiens)とは、ツリフネソウ属の属名ですが、普通インパチェンスというとアフリカホウセンカのことをさします。
 さて、ここで問題、インパチェンスの花弁は何枚でしょうか? 5枚? 10枚? 上の写真で数えてください。 答は近くにあってはおもしろくないので、この記事の後ろの方に書いておきます。

 ツリフネソウ属の植物は、日本ではツリフネソウ、キツリフネ、ハガクレツリフネの3種類のみですが、アジアやアフリカの亜熱帯から熱帯にかけては500種を超える多くの種類があり、なおかなりの未発見の種があると考えられています。 そのなかでインパチェンス(アフリカホウセンカ)の自生地は、タンザニアからモザンビークにかけての海抜1800m以上の高原地帯です。

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    キツリフネ('08.8.9. 六甲高山植物園で撮影)
    日本全土に分布。 ツリフネソウより少し早く咲きだします。

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    ハガクレツリフネ('08.10.4. 六甲高山植物園で撮影)
    和歌山県の山ではよく見ます。 四国・九州にも分布しています。

 インパチェンス(アフリカホウセンカ)の花は、一見これらのツリフネソウの仲間とはかなり違っているようですが、基本的なつくりはよく似ています。 蜜の入っている距も、ツリフネソウの仲間はカーブしており、インパチェンスの距は直線的ではありますが、距のあることには変わりはありません。

 さて、インパチェンスの花弁が何枚であるかの答ですが、既にもう書きました。 ツリフネソウの仲間と基本的な花のつくりは同じだと。
 じつはインパチェンスの花弁は3枚です。 直立する旗弁が1枚と、旗弁より大きく左右の斜め下前方に伸びだす1対の翼弁です。 ただし翼弁は2裂します。 日本のツリフネソウの仲間では2裂した翼弁の片方は小さいのですが、インパチェンスではほぼ同じ大きさに2裂していますので、1枚の翼弁が2枚の花弁のように見えます。 さらに、インパチェンスの花では、旗弁も翼弁のそれぞれの裂片も中央がへこんでいますので、切れ込みに注目すると、(旗弁1+翼弁の裂片2×左右で2)×2で、10の裂片があるようにも見えます。

 インパチェンスの自家受粉を防ぐしくみも、とてもおもしろいのですが、それは明日の記事で・・・

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2008年10月28日 (火)

ミスジミバエ

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 実をいっぱい付けた柿の木の、熟した柿にいろんな昆虫が来ていました。 上の写真(1枚目の写真では左端)は、そのうちの一種、ミスジミバエです。
 ミスジミバエは、翅長8ミリ程度で、ミバエ科に分類されています。 ミバエ科のメスは腹部の端(第7腹節)が長く伸びているのですが、写真では腹部の端が写っていませんので、雌雄どちらか分かりません。
 ミスジミバエはかなり気が強いようです。 他のハエたちは美味しい所を頭をくっつけあってなめているのですが、ミスジミバエはこれらのハエを追っ払っていました。

 柿にはチョウたちも来ていました。 下はキタテハ(秋型:1枚目)とクロコノマチョウ(2枚目)です。

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2008年10月27日 (月)

ハリガネオチバタケ

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 林の中で見つけたかわいいキノコ、ハリガネオチバタケです。 ハナオチバタケもこのような色になることはあるのですが、ハリガネオチバタケのほうが大きくなります。 近くにもっと大きなハリガネオチバタケがあるのですが、残念ながらしおれていました。 ほぼ同時期に同種のキノコが出る場合は、少し早いほうが大きいようです。
 下は傘の裏から見たところ。 傘の肉はきわめて薄く、ひだはきわめて疎です。

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 柄は黒っぽく、名前のとおり針金のように硬くなっています。
 下は柄の付け根を写したものですが、このようにハリガネオチバタケの菌糸は一枚の落葉の上に広がり、柄の根元では少し盛り上がり、綿毛状の菌糸叢(そう)となっています。 このように、ハリガネオチバタケは小型のキノコですが、森林の落葉分解をつかさどり、物質循環に重要な役割を担っています。
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2008年10月26日 (日)

ハナビラニカワタケ

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 ハナビラニカワタケは、異形担子菌類(菌類の分類についてはこちらをどうぞ)のシロキクラゲ科に分類されていて、主に秋から冬にかけて見られるキノコで、世界的に広く分布しています。
 数日続いた雨で、ハナビラニカワタケが水をいっぱい吸って膨れていました(25日:堺自然ふれあいの森)。
 ハナビラニカワタケは、湿ったときと乾燥したときでは外見が著しく異なり、乾燥すると小さく縮んで暗色になり、硬くなります。
 倒木などに発生し、見た目は少し気持ちが悪いのですが、食用菌で、かんこん、かんてん、きくらげ、こんにゃく、やまくらげ、ふさきくらげ、みみきのこ、みみぶさ、など、いろんな方言で呼ばれて親しまれています(ここに書いた名前は方言で、例えば和名の「キクラゲ」は別の種類です)。 さっと湯がいてからポン酢などで食べたり、良い出汁が出るので汁物とも相性が良いと言われています。
 ただし、写真のものについては、少し老菌だったこともあり、私は食べていません。
 写真のキノコには、ショウジョウバエなど、たくさんの小さな虫たちが来ていました。 これらの昆虫は胞子の散布に関係するのでしょうか?

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2008年10月25日 (土)

ムジナタケ

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 キノコの色や表面がムジナを連想させるムジナタケ、庭や道ばた、草地などに生える身近なキノコです。 「堺自然ふれあいの森」で見つけました。 なお、ムジナとはアナグマのことなのですが、タヌキなどと混同されている場合があります。
 ムジナタケの傘は繊維状の鱗片に覆われていて、柄も同色の繊維毛に覆われています。 傘の縁部には、幼菌の時にひだを覆っていた被膜の名残がついています。
 下は裏から見たところ。 ひだは若い頃は灰褐色ですが、次第に写真のような暗紫褐色になってきます。 それぞれのひだの奥には、黒い斑点の模様が見えます。 ひだの縁部は白粉状です
 柄のつばは繊維状で、黒くなり、柄にくっついてしまっています。 このつばより上部の柄の表面は白粉状になっています。

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2008年10月24日 (金)

ツネノチャダイゴケ

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 山でよく木で階段を作ってある場所がありますが、金剛山で、その横木にツネノチャダイゴケが生えていました。
 「チャダイ」は「茶台」で、茶托(ちゃたく)の昔の言い方でしょう。 小さなものによく「コケ」という名前がつけられていますが、チャダイゴケの仲間は「腹菌類」とよばれているキノコの仲間です(昨日の記事参照)。
 いわゆる一般的なキノコは「帽菌類」と呼ばれていて、一般的には傘の裏など、外に接する所に胞子を作るのに対し、「腹菌類」のキノコは組織の内部で胞子を作り(「被実」といいます)、胞子が完成するとキノコの頂に穴が開き、そこから胞子が放出されます。
 チャダイゴケの仲間は腹菌類の中でも変わっています。 上の写真で、茶台のような「殻皮」の中に円盤状のものが入っていますが、これを「小塊粒(ペリディオールまたはペリジオール)」とよび、胞子はこの中に詰め込まれています。
 胞子が広がるしくみについては、雨が降ると小塊粒が雨粒に弾き飛ばされ、近くの草などにくっついた小塊粒が草と共に草食獣に食べられ、草食獣の糞と共に胞子が散布される、と考えられています。
 チャダイゴケの仲間の多くでは、ファニクルスと呼ばれるへその緒状のものが見られ、これで殻皮と小塊粒が結合されています。 下の写真では、多くの小塊粒が既に“茶台”から飛び出していて、へその緒が残っているのが分かります。

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 このへその緒(ファニクルス)は、どんな役割をしているのでしょうか。 壁を伝って流れ込むような静かな雨水の動きでは小塊粒が流れ出ないようにしているのでしょうか。 未熟な小塊粒をしっかりつなぎ止めておくためのものでしょうか。 それとも、まさにへその緒のように、小塊粒へ栄養分を送り込むためのものなのでしょうか。 もしこのあたりの情報情報がありましたら、ぜひ教えてください。

 もう一度、最初の写真を見ていただくと、小塊粒の周囲に小さな虫がたくさんいます。 下はもう少し大きく写したものですが、この虫はトビムシの仲間です。 トビムシは土中生物の一種で普段は落ち葉などの下で分解者として働いているのですが、これだけ集まっているのは偶然とは考えられません。 いったい何を食べに集まっているのでしょうか。
 もしかしたら、子実体の組織の中で作られた小塊粒の表面についている組織の残りをトビムシがきれいに食べることによって小塊粒の表面がツルツルになり、雨粒に弾き飛ばされやすくなるのかもしれません。

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 チャダイゴケの仲間は、キノコらしからぬユニークな形態をしていて、英語では「 Bird's nest fungus 」、つまり「鳥の巣キノコ」と呼ばれます。 でも、胞子の散布の方法など、ユニークなのは形態だけではありません。 なかなか興味を引かれるかわいいキノコです。

※ ツネノチャダイゴケの幼菌の様子はこちらに載せています。

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2008年10月23日 (木)

ヒイロチャワンタケ(キノコの仲間の分類)

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 ヒイロチャワンタケは、緋色の、茶碗というよりは深皿様のキノコです。 金剛山でみつけました。

 キノコやカビの仲間を「菌類」と呼んでいます。 「菌類」と聞いてよく混同されるのが「細菌類」で、こちらは大腸菌などたいへん小さな生物です。

 菌類をもう少し分類すると、下のようになります。
    菌類
        子のう菌類
        担子菌類
            異形担子菌類(キクラゲ、ハナビラニカワタケなど)
            真正担子菌類
                帽菌類(いわゆるキノコ型をしたキノコ)
                腹菌類(ホオベニタケなど)

 ヒイロチャワンタケは子のう菌類です。 多くのいわゆるカビと言われているものも子のう菌類に分類されていて、キノコの仲間と言っても、胞子のでき方など、いわゆる普通のキノコとはかなり違っています。 胞子のでき方などについては顕微鏡レベルの話なので、とりあえず今日は、これ以上の話は置いておきます。
 ヒイロチャワンタケなどでは、胞子は「子のう盤」というところで作られますが、この子のう盤は、キノコの裏側ではなく、表の緋色の部分です。
 下は大きなヒイロチャワンタケ。 大きさの比較のために10円玉を置いてみました。

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2008年10月22日 (水)

イヌセンボンタケ

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 腐った切り株にイヌセンボンタケ('08.10.12.金剛山)。 一つひとつのキノコは小さくても、これだけ群生していると見事です。 傘の周縁には溝線が見られます。
 下は傘が半分なくなっていて内側が見えるキノコの拡大。 ひだは若いうちは白色ですが、これだけ傘が開いてしまうと暗灰色になっています。 傘の表面も柄も白色の微毛に覆われています。
 イヌセンボンタケはヒトヨタケ科ヒトヨタケ属に分類されます。 この仲間の多くは時間が経つとひだが液化するのですが、イヌセンボンタケではこの現象は見られません。

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2008年10月21日 (火)

ツチスギタケ

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 金剛山で見かけたツチスギタケです。 傘の表面にも柄にも淡褐色の鱗片があります。 下は傘の裏側の様子。 胞子を作るひだを幼菌時に守っていた繊維膜状のつばが破れつつあります。

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 このキノコは東北地方などでは食用とされたりもしていますが、消化器系の中毒例があります。
 キノコでは、同種のキノコでも、毒があったり無かったりする場合があります。 今まで食用とされていたスギヒラタケで、平成16年と昨年、急性脳症を疑う事例が発生し、昨年は大きなニュースになりました。
 キノコと種子植物とでは大きく系統が違っていて、種子植物には存在しないさまざまな化学物質をキノコが生産していて、それが毒にも薬にもなるわけですが、まだまだどのキノコがどんな条件でどんな化学物質を作っているのか、よく分かっていません。 というよりも、まだまだ名前の付けられていないキノコもたくさんあるのが現状です。

 今年はキノコが多いようです。 何回か連続でキノコを載せたいと思います。

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2008年10月20日 (月)

クマノミズキの“枝サンゴ”

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 金剛山でクマノミズキの花序が赤く染まっています。 まるで枝珊瑚のようです。
 遠くから目立つこの色で鳥を呼び、果実を食べてもらうのかとも思いましたが、果実はダラダラと長期間にわたって順に黒く熟していくタイプで、そこに果実があることを鳥に覚えてもらって、いわば“常連客”にたよるタイプ。 果実はまだ花序の枝がそんなに染まらないうちから黒く熟し始めます。 となると、この色は、鳥を呼ぶ効果もあるのかもしれませんが、それよりも単純に、紅葉ならぬ「紅枝」が起こっているのではないでしょうか。
 この後、紅葉が散るように、この美しい枝も落ちてしまいます。 これから金剛山を歩くと、あちこちにこの“枝珊瑚”が落ちています。

※ クマノミズキの“枝珊瑚”の写真はこちらにもあります。

 

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2008年10月19日 (日)

ジンジソウ

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 金剛山でジンジソウが咲いていました。 5枚の花弁のうちの2枚が長く、「人」の字のように見えるところからの名前です。
 ダイモンジソウの花にも似ていますが、ダイモンジソウのほうが全体的に花弁が細く、特に上の短い3弁は、ジンジソウでは小さく幅広くオレンジ色の模様があります。
 下の写真にはさまざまな状態の花が写っています。 オシベが順に前方に出てきて花粉を出し、出し終わると後方に退いて葯を落とし、代わってメシベが大きく発達してきて、2本のツノを突き出したようになります。

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(以下、10月21日に追記)
 上の記事で、ジンジソウの花の上の短い3弁にはオレンジ色の模様があると書きましたが、このことについて、なかなかさんは、HPで次のような内容を書かれています(詳しくはこちら)。
 その記事によれば、ジンジソウの花の斑点の色には、黄色と赤がある。 原色日本植物図鑑はじめ多くの図鑑には「黄色の斑がある」としか書いてないが、赤もあって、両者の分布は異なる。 黄色は本州を中心としており、赤は九州に限られているのではないか。 もしかしたら斑点の色以外にも違いがあって、地域変種等の可能性もあるのかもしれない、ということでした。
 改めて金剛山で撮った写真を、ここに載せたもの以外も見てみますと、どちらかというと黄色になるのでしょうが、なかなかさんのHPの写真と比較すると色は濃いようです。
 写真を見ていて、色以外のことに気づきました。 斑点の形です。 多くのジンジソウの花の斑点は1個で、多くの図鑑にもそのように書かれています。 ところがこの記事の2枚目の写真の斑点は左右に分かれかけていて、ハート型になっています。 なかなかさんのHPには、同様の写真もありますが、はっきり2つに分かれた斑点が写っている写真も載せられています。
 金剛山で撮った写真に下のようなものがありました。 この花では、斑点が4つに分かれかけています。

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 ジンジソウに近いダイモンジソウでは、花の形も色も変異が大きく、山草愛好家はさまざまなダイモンジソウを育てておられます。 ジンジソウの花の斑点の色や形にもさまざまな変異があるようで、地理的分布を詳しく調べるとおもしろい結果が出るかもしれません。

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2008年10月18日 (土)

アキノキリンソウ

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 セイタカアワダチソウが日本に入ってきて急激に分布を広げつつあったときに、セイタカアキノキリンソウなどという名前でも呼ばれ、花粉症の原因となる植物だと濡れ衣も着せられました。 そのため、このアキノキリンソウもいまだにセイタカアワダチソウと混同されて悪者扱いされることがあるようです。 でも、アキノキリンソウは古来から日本の草原や明るい森林に自生している植物で、花はセイタカアワダチソウよりも大きいのですが、全体の大きさはセイタカアワダチソウのようには大きくならず、可憐で美しい植物です。 もちろん花粉症の原因にはなりません。 そもそもセイタカアワダチソウも含め、花粉が虫の体にくっついて運ばれる虫媒花の花粉が空気中に漂い、花粉症の原因となることなど、ありえないことなのです。

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 アキノキリンソウは10月4日の六甲高山植物園(1枚目の写真)でも、10月12日の金剛山でも見ることができました。
 下はアキノキリンソウに来ていたオオハナアブです。

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2008年10月17日 (金)

サラシナショウマ

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 10月12日、秋の行楽日和に誘われて行った金剛山で、サラシナショウマがまだ咲き残っていました。
 サラシナショウマは漢名を升麻といい、根を用い、漢方処方で発汗(はっかん)、解熱(げねつ)、解毒(げどく)薬として配合されます。 また山菜にも利用され、サラシナというのは、若菜の茎を茹でて水で晒して食用に供するところからです。

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 9月14日にイヌショウマを記事にしました。 両者を比較すると、パッと見た印象からすると、サラシナショウマのほうが花茎の枝分かれが少なくて花序がスラリと長く(上の写真)、複葉を構成している各小葉が小さいというところですが、両者を区別するポイントのひとつとして、花の柄の有無があります。 下はサラシナショウマの花で、長い柄がありますが、イヌショウマの花にはほとんど柄がありません。

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 上の写真ではオシベがよく目立っていますが、下は花が終わってオシベが落ちた後です。 花のメシベは2~7本あるのですが、金剛山でこの時期に咲いていたサラシナショウマでは2本のメシベの花が多いようでした。

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※ この日に撮ったイヌショウマの果実の写真を、イヌショウマの項に追加しておきました。

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2008年10月16日 (木)

ニトベハラボソツリアブ

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 ヒメジソなどが生えている草むらにニトベハラボソツリアブが数匹飛び回っていました('08.10.13. 堺ふれあい自然の森)。 体長は約1.5cm、飛び方は、長い脚をだらりと下げ、羽音も無く、穏やかです。 時々オスがメスを探しているのか、2個体がからんで飛ぶこともあるのですが、ペアの成立には至りませんでした。
 近づいても平気で、しばらくはその優雅な飛行を楽しんで見ていましたが、さすがに飛行中の写真を撮ることは無理でした。 なかなかとまってくれず、草につかまってもすぐに飛び立ってしまうのですが、やっと撮れたのが上の写真です。
こちらには飛翔の様子を載せています。

 ニトベハラボソツリアブはツリアブ科に分類されます。 以前記事にしたビロードツリアブとは同じツリアブ科なのですが、印象はかなり違っています。 長い口吻と、細く長い脚は共通なのですが・・・
 飛んでいる時の脚の様子も、ニトベツリアブは上に書いたように長い脚を下に垂らしていますが、ビロードツリアブは体の後方に持ち上げています(下の写真:'08.4.29.金剛山で撮影)。

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 ハラボソツリアブの仲間にも多くの種類がいます。 「インセクタリウム」1998.8.に久松定成氏が書いておられる検索表を、一部書き換えて載せておきます。

 1 後胸腹板が黄色
   キムネハラボソツリアブ
   ヤエヤマハラボソツリアブ
 1 後胸腹板が黒色
   2 後脚の第1付節は全体黄色
     スズキハラボソツリアブ
   2 後脚の第1付節の後半部は黒ずむ
     3 中胸背板肩部の黄色班は後方へ伸びる
       ニトベハラボソツリアブ
     3 中胸背板肩部の黄色班は後方へ伸びない
       タイワンハラボソツリアブ

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2008年10月15日 (水)

サクラタデ

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 サクラタデは日本産のタデの中では最も花が大きくて美しいものの1つです。 六甲高山植物園で写真を撮って帰り、調べてみると雌雄異株とのこと。 あわてて写真を調べてみると、雄花の写真が・・・・1枚も無い。 美しく咲いていた同じところを何枚も撮っていたのですが・・・ 教訓:写真はいろんな場所をたくさん撮っておくべきです。
 というわけで、下は雌花。 メシベの3本に分かれた花柱が長く突き出しています。 オシベは短く、葯はピンク色をしていますが、あまり花粉を出しているようには感じられません。

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 雄花はメシベが小さく、8本のオシベが長く突き出していますが、花粉は白っぽいので、突き出したメシベと雰囲気は似ています(下の追記)。 突き出したものの本数で区別するのが、雌花と雄花を簡単に見分ける方法のようですね。

(以下、'11年10月21日追記)
 サクラタデの雄花の写真を送っていただきました。

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(写真提供:わんちゃん)   

 下は上の写真の1つの雄花を拡大したものです。 オシベ8本というのは中途半端な数だと思っていたのですが、花被片の間に位置する場所からしっかりとしたオシベが5本(水色の数字)と、3裂するメシベの柱頭の間の位置から、少し小さなオシベが3本(6~8の青い数字)あるようです。 小さなメシベも存在していて、3裂している柱頭も赤い数字で示しておきました。

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 ヒメアリが写真のいいアクセントになってくれています。

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2008年10月14日 (火)

キイジョウロウホトトギス・キバナホトトギス

 今回は六甲高山植物園で咲いていた黄色いホトトギス2種です。

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 キイジョウロウホトトギス(上の写真)は、紀伊半島に産するつやのある黄色い花を咲かせるホトトギスです。 花は下向きに垂れ、半開きのままで終わります。 ジョウロウホトトギスに似ていますが、葉はより細くて光沢があります。
 上臈(ジョウロウ)とは江戸幕府大奥の職名で、この植物の姿が優雅な貴婦人を連想させるところから、この名がつきました。
 山草として人気が高く、乱獲により少なくなってしまいましたが、和歌山県すさみ町には「キイジョウロウホトトギスの里」が作られているようです。

 日本には黄色い花をつけるホトトギスが8種知られています。 どの種類も自生地は限られていて希産種なのですが、あちこちで栽培され始めました。
 下はキバナホトトギスです。

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2008年10月13日 (月)

レイジンソウ

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Gakushi  伶人(れいじん)とは「音楽を演奏する人」のこと。 レイジンソウは、花の形を雅楽の奏者伶人のかぶりもの(右の写真:艮神社のHPからお借りしました)に見立てたものですが、トリカブトの仲間で、トリカブトの花を小さくして色を薄くして縦に伸ばしたような花です。 
 トリカブトの所でも書きましたが、上の写真(六甲高山植物園で撮影)で、写っている花の部分(淡い紅紫色の部分)は全てガクで、花弁はこの中に隠されています。
 下の写真は、手前のガクを取り除いたもので、縦に2本長く伸びているのが花弁です。

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2008年10月12日 (日)

アケボノソウ

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 アケボノソウは、葉は3脈が目立ち対生、多くの枝を分け、その先に白っぽい花をつけます。 金剛山の沢沿いでも見ることができますが、このページの写真は六甲高山植物園での撮影です。
 花を拡大すると(下の写真)、花弁には黄緑色のやや大きな丸い斑点が2個と、たくさんの緑紫色の小さい斑点があります。 アケボノソウの名前は、この様子を明けの空の星に見たてたところからと言われています。

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 上の写真、花弁の丸い斑点にアリが来ています。 この斑点は蜜腺です。 花弁に蜜腺がある植物は珍しいでしょう。
 しかし上の写真では、この蜜腺は花粉媒介に役立っているようには見えません。 アケボノソウの花粉媒介については、こちらで考察しています。

 アケボノソウはリンドウ科のセンブリ属に分類されています。 鋸歯がなく対生する葉や大きなメシベを見ると、なるほどリンドウの仲間というのが納得できます。 でも、リンドウは合弁花、写真の花は離弁花・・・ではありません。 花冠がほとんど基部まで深裂していて花弁同士が連なっているところはオシベで隠されていますが、やはり合弁花です。
 上でアケボノソウはセンブリの仲間だと書きました。 じつはセンブリも花冠の裂片それぞれに2つずつ蜜腺があるのですが、もっと花冠の基部近くですし、その周囲に長毛が生えているので気がつきにくいつくりになっています。

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2008年10月11日 (土)

ダイモンジソウ

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 ダイモンジソウはユキノシタの仲間(Saxifraga属)です。 花は、ユキノシタやジンジソウなどの花に似ていますが、花弁が細く、上の短い3弁にも模様が全く無く、白色です。 この花弁の様子が「大」の字に似ているところからの名前ですが、「大」の字も、下の2弁がたいへん長いものや、1枚だけ長いものなど、いろんな“癖字”があるようです。 時には色鉛筆で大の字を書くものもあって、園芸品種にされています。

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※ 「大」文字草に対する「人」字草はこちら

 下は庭などにもよく植えられるユキノシタ。 比較のために載せておきます。 今年の5月18日の撮影です。

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 昨日の記事でウメバチソウのオシベが動くことを書きました。 ユキノシタのオシベもおもしろい動きをするのですが、そのことはいずれ日を改めて・・・。

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2008年10月10日 (金)

ウメバチソウ

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 花茎には中央やや下に無柄の1葉をつけるのみで、その他の長柄のある葉は根元から出ているため、ウメバチソウの花の周囲には葉が無く、花がよく目立ちます。
 私がウメバチソウに初めて出会ったのは、夏の室堂。 その時出会ったのは、高山型のコウメバチソウだったのでしょうが、澄んだ空気の中でくっきりと白く輝いていました。
 下はウメバチソウの花の拡大写真。 大きな子房の頂にかわいい柱頭をつけたメシベの周囲には、5本のオシベと、細かく枝分かれした5本の仮オシベがあります。
 仮オシベは12~22裂し、その先は丸く腺体のようになっています。 この部分は蜜を出しているような色をしていますが、蜜は出ていないようです。
 ウメバチソウはユキノシタ科に分類されていましたが、雄しべ10本のうちの5本が仮オシベになるなどの点は他のユキノシタ科の植物とは異なり、APG植物分類体系では、ウメバチソウ科が新設されています。

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 さて、オシベについてです。 写真の花では、左のオシベの葯は元気そうですが、左上のオシベは少し元気が無く、手前のオシベでは縮んだ葯が花糸から取れて、近くに落ちています。 右と右上のオシベでは、葯は取れてしまって、花糸だけが残っています。 どうやらオシベ5本は同時期に成熟するのではなさそうです。
 六甲高山植物園は、それぞれの植物の自生している場所に近い環境をつくって、さまざまな植物を育てていますが、柵があり、見学者は植物のすぐ傍まで行って観察することができません。 柵のすぐ傍で咲いていたウメバチソウの花は2枚目の写真の花のみで、いろんな状態の花の写真を撮ることはできませんでした。 もし撮れていたら、オシベのおもしろい変化を写真で紹介できたのですが・・・
 開花したばかりの花では、全てのオシベは子房にくっついています。 ウメバチソウの1つの花は、10日以上も咲き続けますが、その間、オシベは順々に立ち上がり、花粉を出し、そして花粉を出し終えた葯は落ちていきます。(詳しくはこちら

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2008年10月 9日 (木)

ヒゴタイ

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 ヒゴタイは日当たりのよい草原に生える多年草です。 とは言っても自生地は少なく、本州では数箇所しかなく、阿蘇の草原のヒゴタイは有名ですが、ここでも減少しているようです。 熊本県の産山村には「ヒゴタイ公園」が作られているようです。
 ヒゴタイも昨日載せたヤマラッキョウ同様、茎の先にたくさんの花をつけていることは分かります。 茎の先にたくさんの花をつける植物はたくさんあります。 ヤマラッキョウはユリ科でしたが、ヒガンバナ科のヒガンバナもそうです。 でも、たくさんの花の集まりとくれば、その代表格はキク科でしょうし、ヒゴタイを最初見たときの印象は、キク科のアザミに似ている、というものでした。 葉も硬く、葉縁はトゲ状になっています。
 でも、キク科の特徴は、多くの花をまとめて包み込んでいる総苞があること。 総苞があれば、キクやアザミの花を見ても分かるように、こんなに見事な球形にはなれないはず!
 私がヒゴタイに惹かれたのは、色のグラデーションの見事さもありますが、そんな不思議さからでした。
 ネットで調べると、ヒゴタイはやはりキク科でした。 でも、花のつくりについて、つまり上の疑問について書いている記事は、ネットで見つけることはできませんでした。
 本で探して見つけた答は、上の写真の花のように見えているのは、みんな総苞だ、ということでした。 つまり、キク科は複数の花を総苞が取り囲んで保護します(これを「頭状花序」または「頭花」といいます)が、ヒゴタイの“花”は、この頭花がたくさん球形に集まったものだったのです。
 ヒゴタイの花は、たくさんのトゲ状のものが球形に集まっています(これを「トゲ①」とします)が、そのトゲ①は、たくさんの小さなトゲ(これを「トゲ2」とします)が集まってできています(下の写真)。 タンポポの花は、花茎の頂に1つの頭花をつけますが、この頭花に相当するのがトゲ①で、タンポポの頭花の総苞を形成している総苞片にあたるのがトゲ②ということになります。
 これだけたくさんの頭花が集まっているものですから、1つの頭花を構成している、つまり総苞に囲まれている、本当の花(これを「小花」といいます)の数は、1つだけなのです。 そして私はまだこの小花を見ることができないでいます。
 下は8月9日に六甲高山植物園で撮ったヒゴタイです。 この時はまだ時期が早く、小花つまり本当の花は、総苞の中でツボミの状態です。

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 そして下は10月4日、今度は時期が遅すぎて花は咲き終わっていて茶色くなった花弁が残り、わずかに開いた総苞の隙間からは黒っぽい果実が見えています。

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2008年10月 8日 (水)

ヤマラッキョウ

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 ヤマラッキョウは関東以西から九州の山の草地に生える多年草です。 大阪の近くでは、私は和歌山県の龍門山などで10月の下旬に自生のヤマラッキョウの花を見ています。 でも、六甲高山植物園のようにたくさんまとめて植えられていると、なかなか美しいものです。
 ラッキョウは中国原産で少し大ぶりですが、花はそっくりです。
 ヤマラッキョウ、タマネギ、ネギニラ、ノビルなど、これらの植物はみんな同じユリ科のAllium属で、よく似た花の付き方をします。 つまり、葉に比較してしっかりした花茎があり、花茎の先にたくさんの花をつけます。
 1つの花は、外花被片3、内花被片3、オシベ6、メシベ1よりなっています(下の写真)。

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2008年10月 7日 (火)

キバナアキギリ

 キリの花に似たアキギリ(下の)、そのアキギリに似て黄色い花を咲かせるシソ科の植物が、キバナアキギリです。 花の盛りは過ぎていましたが、六甲高山植物園の林床で咲いていました。

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 花を拡大してみると(下の写真)、赤いメシベの柱頭と、同じく赤い2つの葯が目立ちます。 メシベの柱頭は大きく開いていますが、オシベの葯は花粉を出している様子がありません。

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 じつはオシベは4本あり、2本ずつがくっつきあっていて、そのうちの片方は花粉を出しません。 写真に写っている2つの葯は、この花粉を出さない方の葯です。 この花粉を出さないオシベと花糸どうしがくっついている他方の葯、つまり花粉を出す葯は花冠の上唇に隠されています。 昆虫が蜜を求めて花の中に入って来ると、この花粉を出さない葯を押し上げるかたちになり、それと連動している花粉を出す葯がテコの原理で昆虫の背中に降りてきて、花粉をつけるというしくみになっています。
 でも、花の断面を作ってこのしくみを写真に撮るには、すぐ側で作業をしておられる植物園の人の横ではちょっと・・・ それに花の写真も柵から身を乗り出してやっと撮ったもの。 花の断面の写真を載せるのは、またの機会に。

 キバナアキギリの学名は Salvia nipponica 、「日本のサルビア」です。 Salvia属の花は、ガクの雰囲気が互いによく似ています。
 Salvia属はシソ科に分類されます。 シソ科の特徴としては、茎の断面が四角形、メシベの柱頭が2つに裂けている、全体に香りがある植物が多い、ほとんどがくちびる形の花をつける、対生の葉が多いなど、いろいろありますが、何と言っても大切なのは子孫を作る、つまり種子を作る子房の様子です。 シソ科の子房は深い溝で4つに分けられ(「4分果」と言います)、そのそれぞれの中で1つずつ種子が作られるという特徴があります。 ただし、4つの分果とも種子が作られるとは限りません。
 キバナアキギリの子房は比較的大きく、観察に適しています。 下は、ガクの中で、4分果ともきれいに揃って大きくなりだしている子房の様子です。 4つの分果に囲まれた中央にある黒い点は、花柱がついていた場所です。

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 下はアキギリ、9月7日に金剛山で撮影したものです。

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2008年10月 6日 (月)

タコノアシ

 タコノアシは、茎の頂に放射状に数本に分かれてついている総状花序を、蛸の足の様子に見立てたもので、白い花が、中央が白い蛸の足の吸盤のように見えます。 ツボミのある頃は花序の先端がカールして、より一層蛸の足の様子に似ています。
 10月4日に六甲高山植物園に作られた湿地で見たタコノアシは、残念ながら花は終わっていて、白かったメシベも緑になって膨らみ、果実の成熟に向かっていました。 もう少し時期が遅いと、植物全体が赤くなって“ゆでダコ”が見られるのですが、これには早すぎ、中途半端な時期ではありますが、それでも「蛸の足」のネーミングのうまさには納得できます。

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 まだ少し白っぽさの残っている“吸盤”を拡大してみると(下の写真)、メシベは5本、オシベはメシベの間に1本ずつと、メシベに重なるように5本、計10本あります。 メシベが果実の成熟に向けて大きくなってきていますので、相対的にオシベは小さく見えます。 花弁はもともとありません。

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 タコノアシは河川敷や河口域の湿地、水田の周辺などに生育していましたが、環境の変化で少なくなってしまいました。 私も以前、奈良県の吉野川流域で見たことがありますが、今も残っているかどうか・・・
 タコノアシは、かつてはベンケイソウ科に分類されていましたが、その後、胚の発生の様子や含有物質の研究などから、ユキノシタ科に分類する意見が強まりました。 しかし、蒴果の先端が帽子状に脱落するなどユキノシタ科には見られない特徴もあり、DNA解析の結果も踏まえ、新しいAPG植物分類体系では、「タコノアシ科」を独立させています。 タコノアシは分類学的にもおもしろい植物です。

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2008年10月 5日 (日)

サワギキョウ

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 六甲高山植物園でサワギキョウの花がまだ残っていました。 花の盛りを過ぎて茎の頂部にわずかに花が残っているだけですが、鳥が羽を広げたような優雅な姿には変わりありません。
 サワギキョウは北海道から九州までの山地の湿った草地や湿原などに自生します。 この花を見ると、大阪府下の周辺に田畑が残る町で育った私が、信州の湿地で最初にこのサワギキョウの花に囲まれた時に、その美しさと変わった花の姿に感動した思い出がよみがえります。
 サワギキョウはキキョウ科に分類されていますが、いわゆる一般的なキキョウ科の多くの花とはかなり様子が違っています。 合弁花ではありますが、花冠は5裂し、左右(上唇といいます)と下(下唇といいます)に偏って配置されています。 そして、その上唇間の深い切れ込みの間から、5本のオシベがくっつきあって筒状になったものが突き出し、上でカーブしています。

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 上の写真、くっつきあったオシベの葯の中央から、白く短い棒状のものが突き出しています。 昆虫が飛来してこの棒状の部分に触れると、花粉がこぼれ出て、昆虫の背中につくしくみになっています。
 じつはこの白い棒状のものは、下方の葯の先端に生えている毛の束です。 メシベが見当たりませんが、この時期のメシベは、筒状にくっつきあったオシベの真ん中に隠されていて受粉能力はありません。 つまり雄性期です。
 上の状態から時を経て、花は下の写真のように変化します。 オシベの葯はしおれ気味で、代わってメシベが伸びて葯の間から顔を出し、柱頭が大きく開いています。 メシベが受粉することのできる雌性期で、背中にサワギキョウの花粉をつけた昆虫が飛来すれば、この柱頭で受粉することでしょう。

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 上記のような花のつくりや受粉のしくみなどは、田の畦などに見られるミゾカクシ(アゼムシロ)とたいへんよく似ています。 ミゾカクシとサワギキョウは同じLoberia属で、ミゾカクシの花はサワギキョウの花を小さくしたようなつくりです。

※1 ロベリアの仲間はロベリンというアルカロイドを持っていて、末梢の化学受容器に作用して呼吸興奮作用を示します。 少量なら薬として作用し、禁煙補助剤にも使われているようですが、量が多くなると毒で、横溝正史の推理小説『悪魔の手毬唄』に出てくる「お庄屋殺し」は、このサワギキョウだともトリカブトだとも言われています。

※2 10月4日に秋の六甲高山植物園を訪れました。 これから暫くは、この日に見た植物をシリーズで紹介していく予定です。

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2008年10月 4日 (土)

オオトリノフンダマシ

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 コガネグモ科のオオトリノフンダマシのメス、堺市南区岩室での撮影です。 昼間は葉の裏にいますので、横を通っても、なかなか気づきません。 私も場所をtumumasiさんに教えていただいたのですが、ほとんど移動しないようです。
 7月20日にこの仲間のシロオビトリノフンダマシのことを記事にして、そこでも書いたことですが、トリノフンダマシの仲間は昼間はほとんど動きません。 葉をひっくり返したりしながら安心して写真を撮っていると、さすがに居心地が悪くなったのか、動き出しました(下の写真)。 おかげでクモらしい姿の写真を撮ることができました。

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 でも、少し動き回って、また元の位置に戻って動かなくなりました。

 このオオトリノフンダマシには、大きな腹部の左右にあるはずの目玉のような模様の右側がありません。 大きさは、オオトリノフンダマシのメスとしては標準的な大きさですが、1cmを超えています(下の写真:メジャーの下側の1目盛が1mm)。



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◎ 目玉模様の左右そろったオオトリノフンダマシをこちらに載せました。

 

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2008年10月 3日 (金)

アカメガシワの花外蜜腺

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 この時期になってもまだ新しい葉を出して伸び続けているアカメガシワがありました。 その新しい葉の花外蜜腺(上の写真の赤褐色の円形の部分)にアミメアリが来て、熱心に蜜をなめていました。
 アミメアリは、名前のとおり、頭部と胸部に細かい凹凸があって網目状に見えるアリです。

 一般的に植物は花で蜜を作り、花粉媒介をしてもらう虫や鳥などに来てもらおうとしています。 でも、植物によっては花以外にも蜜腺を持つものがあり、これらの蜜腺を花外蜜腺と呼んでいます。(桜の葉の花外蜜腺の写真はこちらに載せています)
 花外蜜腺の目的の多くは、アリに来てもらうためだと考えられます。 アリは“翅を持たないハチ”だとアリグモの所でも書きましたが、牙と蟻酸を武器として集団で戦うアリは、他の昆虫にとっては怖い存在です。 植物にとっては、そのアリに来てもらっておけば、葉を食い荒らす昆虫から葉を守ってもらえるわけです。
 日本のアリは、まだ動きがゆっくりでおとなしい方です。 以前私はスマトラで手持ちの望遠で撮影しようとカメラを木に押し当てたとたん、腕に数匹のアリが登ってきて咬まれました。 その時の痛さとアリの行動の速さは、深く印象に残っています。

※ アカメガシワの新しい葉が赤く見えるしくみについては、こちらに載せています。

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2008年10月 2日 (木)

キクバナイグチ

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 昨日に続いてもう一種、オニイグチ科のキノコを・・・ 今日はキクバナイグチ、傘の裏は、昨日のセイタカイグチ同様、胞子の出てくる小さな穴(「管孔」と言います)がたくさん並んでいます(上の写真)。
 キクバナイグチには2種類のタイプがあります。 ひとつは、傘の表面の色はくすんだうすい赤褐色で、大型の鱗片で覆われていて、傘が成長するにつれて傘の表面に亀裂が生じてささくれ立ってくるタイプ(上の写真)で、キクバナイグチの名前はこの様子をキクの花に見立てたものです。
 他のひとつは、赤みが濃く、かさの表面の鱗片は細かくてあまりささくれないタイプです(下の写真)。

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 キクバナイグチの特徴のひとつに、傘の周縁の様子があります。 キノコ(=子実体)が若い時は、管孔は被膜で覆われて保護されています。 キクバナイグチでは、傘が広がると、この被膜が破れ、傘の周縁に残って垂れ下がります。 この様子は1枚目の写真でも2枚目の写真でも確認できます。
※ 写真は2枚とも、堺市南区岩室での撮影です。

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2008年10月 1日 (水)

セイタカイグチ

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 セイタカイグチはオニイグチ科に分類されます。 似たグループにイグチ科があるのですが、多くはそれよりも少し荒々しい印象を受けるグループです。
 セイタカイグチは、コナラ林などの地上に生えるキノコで(上の写真:堺市南区岩室で撮影)、傘は淡色、柄は赤褐色で粗い網目状の隆起が目立ちます。
 キノコの仲間の本体は菌糸、キノコは胞子を作り、ばらまく生殖用の器官ですが、いわゆるキノコ型のキノコの多くは傘の裏で胞子を作り、飛散させます。
 イグチ科やオニイグチ科のキノコの傘の裏のほとんどは、小さな穴が一面にあいているように見えます(下の写真)。 これは細い管がたくさんくっつきあっているような構造をしているためですが、胞子はこの管の壁面で作られ、写真に写っている孔から散布されます。

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 イグチやオニイグチの仲間の多く(全部ではありません!)は食べられるキノコですが、セイタカイグチも食べることができます。 傘の肉は柔らかく、いろんな虫が食べるために潜り込んでいる場合がありますが、柄の肉はしまっていて美味しくいただけます。

 今年の夏の終わりから秋にかけては雨が多く、いろんなキノコがよく見られます。
 キノコは似た種類が多いうえに、同じ種が大きさ、傘の開き方、色など、さまざまに変化しますので、顕微鏡で胞子を観察するなどしないと分類が難しいものも多いのですが、このブログで取り上げるのは、外見で種が決められるものだけにしたいと思います。

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