コナギ
雨の水田横の溝にコナギがたくさん茂っていました。 コナギは雨によく似合う・・・といっても、梅雨の話ではありません。
コナギは1年草で、種子から発芽した株は夏の暑さで急に成長する水田雑草の一種です。 そして秋に花を咲かせるのですが、そのコナギの花が咲きだしています(写真の撮影は8月23日)。
コナギが水田雑草である理由のひとつは、発芽に際して酸素を好まない植物だからです。 水田のように水に覆われた土ではよく発芽するのですが、空気中から酸素を十分取り込むことのできる畑などでは、ほとんど発芽がみられません。
コナギはミズアオイと同じ属で、ホテイアオイとも近縁です。 コナギ(小菜葱または小水葱)の名前も、ミズアオイの古名である水葱(ナギ)からきているのですが、ミズアオイのほうはたいへん少なくなってしまいました。
さて、そのコナギの花ですが、単子葉植物の多くの花のつくりと同じく、基本数は3。 上の写真では、晴れていなかったので花は大きく開いていませんが、オシベとブラシ状になった柱頭を持つメシベを取り囲むように、3枚の内花被と、その外側に背側が緑色を帯びた3枚の外花被が写っています。 特に変わった特徴を持った花とは思えませんが・・・
花被片を取り除いてみると、この花の変わった特徴が見えてきます。 6本のオシベのうちの1本だけが特大です(下の写真)。
花被片を取り除く作業の時にたくさんの花粉を落としてしまったのですが、この黒ずんだ特大のオシベの先端からは盛んに花粉が出されていて、すぐ横にあるメシベの柱頭にたくさんの花粉がついていました。 長田武正著「検索入門野草図鑑②」には、この大きなオシベはツボミの中で既に花粉を出している、とあります。
コナギは1年草で、次の年に向けてたくさんの種子を作らねばなりませんし、小さな花ですので飛翔力のある大きな昆虫に花粉媒介をしてもらうことも期待薄、周囲は水ですからアリなどに来てもらうことも期待できず、同花受粉の方向に進化したのでしょうが、これだけの花を咲かせるのに他花受粉にはあまり期待をかけていないようです。 個々のコナギの花の咲いている時間も、たいへん短くなっています。
下の写真は、花被片を取り除いた花を別の角度から撮ったものです。 特大オシベの花糸は幅広く平たくなっていますが、そこから大きな「つの」が出ています。 この「つの」は機能的に何かに役立っているのでしょうか。 それとも目立たないところで着飾る“自己満足的装飾”なのでしょうか。
近年、北アメリカ原産のアメリカコナギが帰化しています。 この植物についてはこちらでどうぞ。
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コメント
水田の稲穂も実り始めています。
もう色が変わりつつあるのも中には・・・・
こんなに可愛いお花が咲いてるなんて気がつきませんでした。
もちろんきれいな水の水田横の溝なんでしょうね。
ウチの近所で見つけられるかな??
投稿: わんちゃん | 2008年8月30日 (土) 11時14分
除草剤の使われ方などで、どの田でも見られるわけではありません。
あまり水のきれいさとは関係ないと思います。
わんちゃんの近くの田でもあればいいですね。
投稿: そよかぜ | 2008年8月30日 (土) 18時44分
この時以来「コナギ」に出合う機会が何回もありました。
水田雑草と言われても、
水色のちっちゃいお花、
その可愛さに惹かれて、
ついカメラ向けてるわんちゃんです。
投稿: わんちゃん | 2010年9月23日 (木) 15時05分
晴れた日にはきれいに開いていますからね。
投稿: そよかぜ | 2010年9月24日 (金) 06時57分
>晴れた日にはきれいに開いていますからね。
えっ!そんなら
雨の日とか曇りの日は開いてないのでしょうか?
投稿: わんちゃん | 2010年9月24日 (金) 14時18分
私の見たところではそんな感じがしたんですが、いろいろ調べてみても、はっきり書いてあるものには出会えませんでした。
もしわんちゃんの近くで観察しやすい場所があれば確かめてみてください。
投稿: そよかぜ | 2010年9月25日 (土) 08時11分