有性生殖は他の個体と遺伝子を混合し、様々な形質の子孫を作ることに意義があります。 植物は工夫を凝らして自家受粉(花粉を同じ花のメシベで受粉する)を避けようとしています。 そのことをキキョウの花の場合で見ていくことにします。
下の写真には、キキョウの花のツボミ(中央上と右下)から花の終わった後(中央上)まで、様々な段階の花が写っています。 開いている花は3輪ですが、メシベとオシベの様子は全部違っています( 右下の花は花弁の数まで違っています(奇形)が・・・)。 これは自家受粉を避けるために複雑なことを行っているためなのですが、どのような順番で変化しているのでしょうか?
① 咲いたばかりの花では、メシベの花柱にオシベの葯が押し付けられています(下の写真)。 この時既に花粉は出されているのですが、その花粉はメシベの花柱にくっつけるように出されます。
② 花粉を出し終わったオシベはメシベから離れます。 メシベの花柱には花粉がいっぱい付いています(下の写真)。 この花粉の付いている部分では、メシベは受粉できません。
③ 蜜はメシベの根元にあります。 この部分ではオシベの付け根が膨らみ、縁には毛が生えていて、蜜のある場所を保護しています(下の写真)。
メシベの花柱は丈夫にできています。 虫が②の状態の花の、突き出たメシベの花柱の先端(そういう場所がとまりやすい)に着地し、スルスルと花柱を伝って蜜のありかに近づこうとしたり、花柱につかまって口を伸ばそうとすれば、虫の体は花粉まみれになるでしょう。
④ さて、今度は花粉を受ける番です。 この時になってはじめてメシベの先端にある柱頭が開き、受粉できる場所が表に表れます。 柱頭の表面には短い毛がビッシリと生えていて、花粉を受け止めやすくなっています(下の写真)。 他の花の花粉を体につけた虫が柱頭にとまれば、めでたく受粉できることになります。
このページの写真は全て六甲高山植物園で撮ったものです。 キキョウはあちこちで栽培されていて、わざわざ高山植物園にまで行って撮る花ではないでしょうが、いろんな段階の花が揃っていたもので・・・・
※ 同じような自家受粉を避ける仕組みは他の花でも見られますが、リンドウの場合をこちらで紹介しています。
【 メモ 】 「キキョウ」の語源について
キキョウを漢字で書くと「桔梗」ですが、「桔」も「梗」も、普段はあまり使わない漢字です(「脳梗塞」くらいかな)。 「桔梗」の読みを聞かれて答えられない人もいるでしょう。
じつは「キキョウ」は漢名の「桔梗」の読み「キチコウ(キチカウ)」から変化したものとされています。 キキョウの根は薬草として用いられていて、「桔梗」は乾燥した根が硬いところからです。
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