ガクアジサイ
(写真はクリックで拡大します)
梅雨の雨にアジサイの花がよく似合います。 最近ではさまざまなアジサイの仲間が園芸店の店先を飾っています。
アジサイの仲間は、たくさんの花が集まって咲くことはよく知られています。 ガクアジサイでは、花序(「花のつき方」の意味ですが、ここでは「多くの花の集まり」の意味で使っています)を構成している花に2種類あります。 周囲にある目立つ花を「装飾花」と呼び、これは本来は花の存在を目立たせて虫を引き付けるための花で、種子を実らせることはできません。 そして、中心部に集まっている小さな花を、オシベとメシベが揃っている花ですので、「両性花」と呼んでいます。
庭に植えて大きくなる、昔からのなじみのある装飾花ばかりのアジサイは古くにガクアジサイから装飾花の多いものを選び続けて作られた園芸種でしょうが、ガクアジサイは本州や四国の太平洋側の海岸に野生することが知られています。 私たちが普通目にするガクアジサイは、やはりよりきれいな花を求めて作られた園芸種ですが、まだ野生的な性質を残していると言えるでしょう。
ガクアジサイの装飾花では、花のガクが大きく発達しています。 だからガクアジサイ・・・ではありません。 もしそうなら、装飾花ばかりの普通のアジサイの方が、よほどガクアジサイです。 ガクアジサイの名前は、両性花を取り囲む装飾花を額縁に見立てた“額アジサイ”なのでしょう。 ちなみに、アジサイに「紫陽花」の漢字を当てはめるのは誤りです(下の)。
上に書いたように、装飾花は生殖活動が目的ではありません。 ですから、上の写真でも下の写真でも、両性化は花開き花粉を出しているのに、装飾花の花弁はまだ開いていません。 装飾花は早くからガクのみを開き、遅くまでガクをそのままで保ちます。
虫媒花の花は①虫を引き寄せ、②花粉を媒介してもらわなくてはなりません。 ガクアジサイの花は、この①と②を装飾花と両性花で分担することで、両者の機能をより充実させようとしている花なのです。
「紫陽花」とは、唐の詩人白楽天の詩にみられる植物で、中国の招賢寺にあり、色は紫で芳香を放つ仙界の麗花(この植物が何であったかは不明)の名前なのですが、昔、アジサイに漢名をあてはめる必要に迫られたとき、この詩に書かれている植物がアジサイに違いないと、この漢字を当てはめたのですが、アジサイが芳香を放つとは言えないでしょうし、アジサイは中国渡来の植物ではなく、上に書いたように日本に自生していた植物です。
現代の中国では、アジサイは綉球、天麻裏花、八仙花などと、さまざまに表現されていますが、日本から持ち込まれた園芸的に改良された花であることを示す名前が多くなっています。 日本で間違った「紫陽花」も、日本から“逆輸入”して使用されているようです。
天麻裏花は「テマリ花」から来ているのでしょうが、八仙花は、両性花を取り囲むガクアジサイの装飾花を、8人の仙人に例えたのかもしれません。
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コメント
勉強になりました
わたしの家の庭にもひとつ咲いてます
去年4鉢の紫陽花を植えたのですがひとつだけ育ちました
この季節にはかかせない花ですね
投稿: やさしい | 2008年6月23日 (月) 07時13分
やさしいさん、こんにちは
アジサイの花を見ていると落ち着きますね。
頭の活性化とこころの休養に、ご訪問お待ちしています。
投稿: そよかぜ | 2008年6月23日 (月) 22時40分
初めて庭にアジサイを植えたとき、青系のアジサイを頂いたのに、そのときは赤系がなんとなく好きだったので、石灰などまいて赤系にしたような記憶があります。
今は青系が好みなんですが、そううまい具合にはころころと変わっては咲いてくれませんよね。
濃い赤いのと白いのとが咲いてます。
その白いのも、真っ白から毎年、ピンクっぽくなっていきます。
一枚目の青、良い色ですね。
そうそう、この時期、五木ひろしさんの「紫陽花」をカラオケでよく歌います。
投稿: わんちゃん | 2008年6月26日 (木) 10時59分
青系のアジサイは青く咲かせ、赤系のアジサイは赤く咲かせてこそ、美しい色を見ることができます。
わんちゃんの「紫陽花」聞きたいですね。
投稿: そよかぜ | 2008年6月27日 (金) 00時45分