マルバデイゴ
サンゴシトウ
来る夏を予告するかのように、マルバデイゴもサンゴシトウも、今が花盛りです。 これらの熱帯花木は温度さえあれば季節を問わず花をつけるようですが、落葉の冬を終え、新しく展開した葉で光合成を行い、花を咲かせるに足る養分を蓄えて花芽を形成し、その花が咲くこの時期が、それぞれの枝の条件が揃っているため、一番多くの花をつける時期です。
マルバデイゴとサンゴシトウは、きわめて近縁の植物です。 ところが花の向きが上下まるで逆さまになっています。 そこで今日はこの両者を並べて載せてみました。
写真の花で分かるようにどちらもマメ科の木なのですが、マルバデイゴの花の旗弁は下になっていて、サンゴシトウの多くの花の旗弁は、他の多くのマメ科の花のように上を向いています(上の3枚の写真を比較してみてください)。
マルバデイゴ(丸葉梯姑)
沖縄にはデイゴという木がありますが、マルバデイゴというのは、デイゴに似て(同じ仲間です)、葉の形が丸いところからの名前です。 原産地はブラジル南部です。
このマルバデイゴとよく混同されている植物にアメリカデイゴ=カイコウズ(海紅豆)がありますが、こちらの方は小葉が細長く、葉の先端が尖り気味です。
マルバデイゴの花は鳥媒花です。 花の赤い色は鳥好みで、昆虫は人には見えない紫外線領域が見えるのですが、昆虫には赤は見えないのです。 そして鳥の硬いクチバシでつつかれても耐えられるように、ガクは厚く硬くなっていて子房を保護し、花弁も厚くなっています。 そして昆虫より体の大きな鳥を満足させられるように、蜜をいっぱい蓄えます。 下の花の断面の写真で、花の付け根に蜜を蓄える広いスペースがあるのが分かります。(ここに蓄えられていた蜜は、断面を作る時にこぼれてしまいました。)
上で、マルバデイゴの花は、他の多くのマメ科の花とは逆に、旗弁が下を向いていると書きました。 この花のつくりは、どのような意味を持っているのでしょうか。
じつはハチドリのような鳥がマルバデイゴの花を吸蜜に訪れたとき、オシベの葯とメシベの柱頭は、ちょうど鳥の頭が触れる位置にあるのです。 でも、そのような鳥のいない日本では、種子もできず、鳥のための多量の蜜も、その一部がアリに利用されるだけです。
この花を見つけたら、近くで枯れたイネ科の草を探してください。 このイネ科の草の節間を切り取って小さなストローを作り、花に差し込んで吸うと、甘い蜜が口の中に広がります。
サンゴシトウ(珊瑚刺桐、珊瑚紫豆)
サンゴシトウはヒシバデイコ(菱葉梯梧)とも言われています。 漢字で書かれる場合に最もよく使われる「珊瑚刺桐」は、「珊瑚」は花の色から、枝に少しトゲがあるので「刺」、葉が桐のようだというので「桐」というわけです。
このサンゴシトウは、シドニー植物園で、アメリカデイコとエリツリナ・ヘルバケアの交配により作られた園芸品種なのです。 エ・ヘルバケアは草本ですので、草と木の交配というたいへん珍しい交配です。
人工的に作られた植物なので、人にとって美しく見えることが全て。 受粉のしくみはいいかげんです。 そのため花の向きはマメ科本来の旗弁が上になっている花が多いのですが、アメリカデイゴの血も引いているため、横を向く花も出てきます。 旗弁もマルバデイゴのように大きく開きませんので、花は筒状に締まって見えます。
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