ショウジョウバカマ
ショウジョウバカマは、北海道から九州まで、やや湿った場所であれば、田の畦道から崖の斜面、高山帯の高層湿原まで、いろんなところに生えています。
名前については、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』には、「花が赤いのを猩々(中国の伝説上の動物のこと)になぞらえ、根生葉の重なりが袴に似ていることから名付けられたとされる。」とあります。 そしてここからの引用でしょうが、そのように書かれたブログやHPもたくさんあります。 でも、花の「猩々」と葉の「袴」をくっつけるのは不自然です。 異質なものを組み合わせた植物名は他にはほとんどありません。 私はこの名前は「猩々の袴」だと思います。
「猩々」という謡曲があります。 これは、中国・揚子江流域の海底に住んで酒をこよなく愛した妖精猩々が、酒売りの親孝行の子供に、酒が尽きない壷を授けるという祝言の曲です。 これを能で舞うときの姿は、赤く長い髪に赤い衣装、もちろん袴も赤い色です。 この赤い色には猩々緋(しょうじょうひ)という名前までついています。
ショウジョウバカマは常緑です。 冬、地面にピッタリくっつけた葉は寒さに耐えるために赤い色になっています(冬における葉の色の変化は、わんちゃんのブログに書かれています)。 昔の知識人にとっては、能はもっと身近なものだったでしょう。 冬に湿った斜面で一方に垂れ下がったショウジョウバカマの赤い葉は、目立ちますし、まさしく「猩々」を舞うときに身につける袴を連想させます。
春になると猩々緋の葉は緑に戻ります。 しかし、先の方にまだ少し緋色を残した葉もよく見ることができます。
ショウジョウバカマの花は、大阪では3月下旬から4月上旬に咲きます。 花の色は淡紅から紫までいろいろですが、時には白い花もあり、シロバナショウジョウバカマと呼ばれています。
花は最初は寒さに耐えるように低い位置で咲くのですが、次第に茎が伸び、花の高さは高くなります。 花の終わりに近づくと、色は次第にあせてきますが(下の写真:4月12日撮影)、6枚の花被は花が終わっても残り、子房を保護します。
この後、下を向いて種子の成熟を待っていた花は、種子が完成すると、高く伸びた茎の頂で上を向き、少しでも遠くへ種子が飛ぶようにがんばっているように見えます。
ショウジョウバカマには、もうひとつ、おもしろい特徴があります。花が終わる頃から新しい葉を出し始めますが、その頃から、古い葉の先に不定芽を作り(下の写真)、それによっても殖えていきます。
撮影:4月12日 「堺自然ふれあいの森」にて
※ 九州には白色またはわずかに紅色を帯びて、花被片が短くて広い変種ツクシショウジョウバカマが見られます(エフさんのブログにも載っています)。
| 固定リンク
コメント
フリー百科事典
『ウィキペディア(Wikipedia)』
>世界の賛同者によって記事がかかれ、修正され、日々育っています。<
私もよく参考にしてます。
ショウジョウバカマのハカマのこと、そよかぜさんの思いも編纂されるといいね・・・
ショウジョウバカマも冬は葉っぱが紅いのね
そして枯れないで春には緑になるんよね。
投稿: わんちゃん | 2008年4月13日 (日) 23時16分
> ショウジョウバカマ「も」冬は葉っぱが紅いのね
> そして枯れないで春には緑になるんよね。
この「も」一文字の重さ・・・
投稿: そよかぜ | 2008年4月14日 (月) 06時31分
【も】
それわね、思わずついて出た・・・・
私的にはウチの近所の草紅葉の発見が先だったから・・・ね。
(自力で発見したワケじゃないけど・・・)
投稿: わんちゃん | 2008年4月14日 (月) 08時46分
そして草紅葉の色も、明るい赤、落ち着いた紅色など、植物の種類によって違うんですよね。
投稿: そよかぜ | 2008年4月14日 (月) 23時46分
こんにちは♪
こうして見ると何となくツクシショウジョウバカマとは
違って見えますね
どこが違うのかはっきりわからないところが寂しい。。
今度見かけたら葉っぱの先から芽が出てるところを
しっかり観察してみます
投稿: エフ | 2008年4月15日 (火) 13時09分
ツクシショウジョウバカマでも不定芽を作るのか、私も知りたいです。
古そうな葉でぜひ探してみてください。
投稿: そよかぜ | 2008年4月16日 (水) 07時06分
袴のように広がっている葉に注目してショウジョウバカマと名付けたことを知りました。「謡曲」の話も入っていて関心を持って読めました。
寒い時期に見られる葉の色や芽が赤味がかっている訳も分かりました。
私もショウジョウバカマの不定芽を3年かかって見つけ感激しました。
投稿: itotonbosan | 2013年3月 6日 (水) 09時59分
ショウジョウバカマの不定芽は、知らないと見過ごしてしまいますが、なかなかおもしろいものですね。
寒さに耐える葉が赤くなるのは凍結防止のために細胞質の成分が変化するからでしょうが、新しい葉が赤い色をしているのは、何か別の生態的な意味があるのだと思います。
投稿: そよかぜ | 2013年3月 6日 (水) 22時20分