キウリグサ・ワスレナグサ
2月から咲き出したキウリグサの多くは、今はもうすっかり伸びきって、写真の対象としてはおもしろくありません。 ところが、よく成長した株で、根元から新たに茎を伸ばして花をつけ始めているものがあり、さっそく撮ったのが下の写真です。
キウリグサ(キュウリグサともいいます)の学名は Trigonotis peduncularis (Trevir.) Benth. 2年生草本で、冬の間の葉はロゼットを作って光合成を続け、春になると茎を伸ばして花をつけ始めます。 草をもむとキュウリのにおいがするところから、名前が付けられました。
このキウリグサとよく間違えられるのがワスレナグサです。 「ワスレナグサ」の名は、通常はムラサキ科ワスレナグサ属( Myosotis属 )の種の総称として使われます。 園芸的に使われるものの多くは、欧州原産のノハラワスレナグサや日本在来のエゾムラサキなどの種間交配種です。
写真ではよく似ているのですが、花の直径はキウリグサの約4倍ほどもあり、品種改良の結果、花の数もたいへん多くなっています(下の写真)。 葉の形もかなり違っています。
花の様子はこれほどよく似ているのに、学名で属が違っているのは、少し違った仲間だということで(例えば、サクラもウメも同じ Prunus 属です)、例えば大切な子孫を作る場所である果実も、4個の分果に分かれるところは共通ですが、キウリグサの分果は四面体形であるのに対し、ワスレナグサの分果は卵形です。
花の色や形だけではなく、花のつき方も似ているのですが、これはキウリグサやワスレナグサなどが属するムラサキ科全体の大きな特徴で、花穂を見ると、下から花が咲いていきながら、その先に渦を巻いて付いているツボミが成長を続けます。 つまり、花穂の先になるほど小さなツボミがついていることになり、花序が成長を続ければ、つまりこれらのツボミが大きくなりながらさらにその先に“ツボミの赤ちゃん”を作り続ければ、無限に花が続くことになります。
実際には花の時期が限られており、ツボミを成長させるための栄養分補給にも限度がありますから、永久に花が咲き続けることはありませんが、このような花序を「無限花序」と呼んでいます。 また、渦を巻いている花序を、サソリが尾を持ち上げていることに見立て、「サソリ状花序」と呼ばれることもあります。
もう一度上の2枚の写真を見てください。 花序はちゃんと渦を巻いています。 この特徴は、もちろんヤマルリソウ、ホタルカズラなど、他のムラサキ科の植物でも見ることができます。
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コメント
それでね、
散歩の道端に咲いているのが「キュウリグサ」に決定して、ちっちゃな草を揉んでみたのですが、著しくキュウリのにおいがしないんですよ、
ほんのかすかな、においでしょうかしら?
私なんかが見ると、見れば見るほど良く似てますねぇ・・・
ちょっと摘ましてもらって、園芸店にワスレナグサがあれば比べてみるのも・・・
投稿: わんちゃん | 2008年4月 8日 (火) 17時24分
そんなに強いにおいではないですよ。花穂が少し伸びだした頃の方が、少しはにおいがきついかもしれませんが・・・
キウリグサとワスレナグサの違いは花の大きさと葉の形の違いで簡単に見分けられます と言いながら、記事の写真には葉が全く写っていないですね
投稿: そよかぜ | 2008年4月 9日 (水) 00時04分
こんばんは。
ムラサキ科の花はみんな可愛いですね。今年はまだワスレナグサを見ていないので、見つけるのが楽しみです。
投稿: 多摩NTの住人 | 2008年4月12日 (土) 21時12分
反射率の関係かもしれませんが、目で見た美しさが写真ではなかなか表現できない花がある一方、写真で写したほうがきれいな花もあります。
ヤマルリソウやホタルカズラなど、ムラサキ科の花は後者のような気がしています。
投稿: そよかぜ | 2008年4月12日 (土) 23時20分