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2007年11月12日 (月)

ハラビロカマキリの偽瞳孔

 11月10日の記事で、カラスウリの種子がカマキリの顔に似ていると書いたところ、コメントでカマキリの顔から眼の話になりました。
 下は9月29日に撮った、ヒヨドリバナの花に隠れて獲物を狙うハラビロカマキリですが、カマキリの顔を写真に撮ると、表情豊かです。 これはカマキリの複眼の中に、つぶらな瞳(ひとみ)のような黒い点があり、それがいつも、ほぼこちらの方向を向いているからです。(サイドバーの「マイフォト」のチョウセンカマキリの顔なども見てください)

Harabirokamakiri070929_1

 この黒い点を「偽瞳孔」と呼んでいます。
 眼は光を吸収して情報を得ていますが、全ての光を吸収してしまうわけではありません。 カマキリの複眼が緑色に見えるのは、複眼に入った光のうち、緑色の光は反射され、それが私たちの目に入ってくるからです。
 偽瞳孔の場所は移動しますから、その場所に黒い色素があるのではありません。 黒く見えるということは、そこに入った光はほぼ全て吸収されているということです。
 昆虫の複眼は、たくさんの個眼が集まって作られています。 個眼は細長く、眼の奥に向かって伸びています。 個眼と個眼の間は色素で仕切られています。 この個眼を細長い筒のイメージで捉えると、筒を斜めにして見ると、筒の内面が見えます。 つまり個眼の間にある色素の色が見えます。 ところが、底まで見える位置に持ってきた筒の内面はほとんど見えません。 これが偽瞳孔のしくみだと思って納得していました。 しかし今回、この記事を一旦は載せたものの、気になって、お見せしていない写真を含め、再度写真で偽瞳孔の位置を見直したところ、カマキリの偽瞳孔の位置は、いずれも少しずつ真正面からはずれています。 偽瞳孔を説明するには、別の要素を付け加える必要がありそうです。
 ついでに、カマキリなどでは、個眼を仕切っている色素は移動します。 光の少ないところでは色素を複眼の表面近くに集めます。 そうすると、光がどちらの方向から来たのかという情報はぼやけるでしょうが、個眼の仕切りで吸収される光が少なくなるわけですから、眼に入った光を有効に利用することができます。 この場合、複眼に入った光の多くが反射されずに吸収されるわけですから、複眼の色は濃く(=黒っぽく)なります。 カマキリでは、暗いところでは青黒い眼の色になります。
 昆虫の種類によって、個眼のつくりは細部ではいろいろ違っています。 結果として、均一に見える複眼、偽瞳孔を持つ複眼、場所によって色素に違いがあるために模様のある複眼などが見られます。

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昆虫01 バッタ・カマキリ」カテゴリの記事

コメント

オッオオオオオ~

こんなに間近にカマキリのお顔、見たのは初めて・・・・
愛嬌たっぷりなんだぁ~~

あっち見て、こっち見て、又あっち見て
見比べて・・・・
違い、ビミョウ!!

同じカマキリちゃんが体、緑になったりベージュになったりするんですよね?

ウチのミーコが私を見たとき瞳が細くなったりまぁるくなったり、光の加減か、とも思ったりするのですが、関係ないかな?

投稿: わんちゃん | 2007年11月12日 (月) 16時52分

こんばんは♪
このカマキリ腹黒く見えますね
妙に可愛く見える時もあり薄情そうな時もあります
偽瞳孔ですか~
ちょっと気になるんですが口の横にぴろぴろしたのが
ついていて興奮したらそれが動いて不気味です
あれって何?

カラスノウリよく色づいてましたね
こうして見ると種はカマキリにそっくり
そよかぜさんたくさん集めてしまったでしょ

投稿: エフ | 2007年11月12日 (月) 21時47分

わんちゃんへ
カマキリの体色はショウリョウバッタの体色のところで書いたのと同じことだと思います。
哺乳類の瞳孔の大きさは光だけではなく、自律神経によっても変化しますので、興奮すると大きくなります。でも、これは昆虫の眼とは関係なし。

エフさんへ
昆虫の口は、多くの「口器」からできていますが、これらの口器は発生的には「付属肢」からできます。つまり脚と起源は同じです。極言すれば、脚が集まって口を作っているわけです。
ですから、エフさんのいう“ぴろぴろ”は「小あごひげ」と「下唇ひげ」でしょうが、哺乳類などから想像する「ひげ」とは全く違い、これも脚的要素を持ち、餌を挟んだりするのに役立っています。

投稿: そよかぜ | 2007年11月12日 (月) 23時30分

 なるほど擬瞳孔の位置は真正面を向いている個眼の位置を表していたんですね。
 私の所も今日カマキリの顔ばかり集めてアップしたばかりでこちらにお邪魔したらタイムリーなお話で驚きました(笑)。

投稿: タロ | 2007年11月13日 (火) 11時36分

タロさん、みなさん、すみません。
記事の内容を変更しました。写真を再度きっちり見ていくと、擬瞳孔の位置は真正面を向いている個眼の位置とは言えないように思えてきました。一定のルールはあるようですが・・・

投稿: そよかぜ | 2007年11月13日 (火) 23時17分

 擬瞳孔のしくみについて、分りやすい説明でなるほどと納得したものの、自分のブログに立ち返り、カマキリの顔を見たら何やら違和感を覚えました(特にコカマキリの写真)。
 そよ風さんもすぐ訂正されたので、逆に合点がいった次第です。擬瞳孔・・・・やはり謎ですね。如何なる仕組みによるものなのか、興味が湧きます。

投稿: タロ | 2007年11月14日 (水) 00時31分

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