ひっつきむしの種子散布
植物の種子散布の方法のひとつとして、“ひっつきむし方式”があります。
ひっつきむしはくっつくだけでは種子散布にはなりません。運ばれた後、離れて地面に落ちなければ意味がありません。 でも、「ひっつきむしはいかにして離れるか」なんてテーマで書かれてあるのは、私は寡聞にして知りません。
9月24日のコメントで、エフさんにそのことを書いたところ、エフさんはガーゼのハンカチにいろんなひっつきむしをくっつけて継続観察するなど、いろいろ調べてくれました。 エフさんの考察はかなり深いところまで進んだように思いますが、私の考えていることも含め、以下にまとめてみます。
ひっつきむしは大きさも様々、くっつきかたも様々です。 9月25日にエフさんが思いついたのは、動物が積極的にひっつきむしを取り除こうとする行動があるのではないかという事です。 私は、オオオナモミなどの大きなひっつきむしの場合は、動物がうずくまったり横になったりするときにひっつきむしが邪魔になりますので、この行動が中心になるのではないかと思います。
オオオナモミ
では、ひっつきむしは一定の時間の経過後に取れやすくなるような変化は無いのでしょうか? 私は小さなタイプのひっつきむしでは、時間経過に伴って起こるいろんな変化は無視できないのではないかと思います。
10月9日のコメントで、エフさんは、ヌマダイコンのひっつきむしのベタベタは時間が経って乾燥してきたらくっつきが弱くなったように感じたと書いています。 ヌマダイコンのほか、チヂミザサなどのベタベタタイプのひっつきむしは、時間が経つにつれ、離れやすくなるのだと思います。
アレチヌスビトハギのひっつきむしでは、しなやかさが変化します。 青いうちにくっついたアレチヌスビトハギの果実は、時間とともに水分が少なくなり、ナヨナヨとしてきます。 さらに時間が経つと、今度は水分が飛んでパリッとしてきます。 柔かすぎるのも硬すぎるのも、適度に張りのある状態に比べれば、取れやすいような気がします。
アレチヌスビトハギ
そして、10月15日のコメントで、エフさんの考察は核心に迫ったように思います。 私たち人間が感じるひっつきむしの“ひっつき度”と、動物にくっつく“ひっつき度”は異なるのではないか、つまり、人間がくっつかれて困る衣類の繊維は縦横に複雑に織られていますが、動物の毛は一方向に流れているだけだ、というわけです。 縦横に織られている繊維に絡んだひっつきむしは、どちらに動かしてもさらに繊維と絡みますが、一方向に流れている動物の毛では、ひっつきむしをその方向にずらせば、スッと抜けるというわけです。 人間は衣類にくっついたひっつきむしを見て、その離れにくさでひっつきむしを理解しがちですが、本来動物にくっつくように進化してきたひっつきむしは、「適度に離れやすく」くっついているというわけです。 犬に服を着せて草むらに入らせると、このことはハッキリします。
エフさんはひっつきむしを観察し続ける中で、ひっつきむしのくっつく細かなしくみの美しさに感動されたようです。 ひっつきむしには「機能美」があるようです。
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