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2007年10月31日 (水)

ひっつきむしの種子散布

 植物の種子散布の方法のひとつとして、“ひっつきむし方式”があります。
 ひっつきむしはくっつくだけでは種子散布にはなりません。運ばれた後、離れて地面に落ちなければ意味がありません。 でも、「ひっつきむしはいかにして離れるか」なんてテーマで書かれてあるのは、私は寡聞にして知りません。
 9月24日のコメントで、エフさんにそのことを書いたところ、エフさんはガーゼのハンカチにいろんなひっつきむしをくっつけて継続観察するなど、いろいろ調べてくれました。 エフさんの考察はかなり深いところまで進んだように思いますが、私の考えていることも含め、以下にまとめてみます。

 ひっつきむしは大きさも様々、くっつきかたも様々です。 9月25日にエフさんが思いついたのは、動物が積極的にひっつきむしを取り除こうとする行動があるのではないかという事です。 私は、オオオナモミなどの大きなひっつきむしの場合は、動物がうずくまったり横になったりするときにひっつきむしが邪魔になりますので、この行動が中心になるのではないかと思います。

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   オオオナモミ

 では、ひっつきむしは一定の時間の経過後に取れやすくなるような変化は無いのでしょうか? 私は小さなタイプのひっつきむしでは、時間経過に伴って起こるいろんな変化は無視できないのではないかと思います。
 10月9日のコメントで、エフさんは、ヌマダイコンのひっつきむしのベタベタは時間が経って乾燥してきたらくっつきが弱くなったように感じたと書いています。 ヌマダイコンのほか、チヂミザサなどのベタベタタイプのひっつきむしは、時間が経つにつれ、離れやすくなるのだと思います。
 アレチヌスビトハギのひっつきむしでは、しなやかさが変化します。 青いうちにくっついたアレチヌスビトハギの果実は、時間とともに水分が少なくなり、ナヨナヨとしてきます。 さらに時間が経つと、今度は水分が飛んでパリッとしてきます。 柔かすぎるのも硬すぎるのも、適度に張りのある状態に比べれば、取れやすいような気がします。

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   アレチヌスビトハギ
 そして、10月15日のコメントで、エフさんの考察は核心に迫ったように思います。 私たち人間が感じるひっつきむしの“ひっつき度”と、動物にくっつく“ひっつき度”は異なるのではないか、つまり、人間がくっつかれて困る衣類の繊維は縦横に複雑に織られていますが、動物の毛は一方向に流れているだけだ、というわけです。 縦横に織られている繊維に絡んだひっつきむしは、どちらに動かしてもさらに繊維と絡みますが、一方向に流れている動物の毛では、ひっつきむしをその方向にずらせば、スッと抜けるというわけです。 人間は衣類にくっついたひっつきむしを見て、その離れにくさでひっつきむしを理解しがちですが、本来動物にくっつくように進化してきたひっつきむしは、「適度に離れやすく」くっついているというわけです。 犬に服を着せて草むらに入らせると、このことはハッキリします。
 エフさんはひっつきむしを観察し続ける中で、ひっつきむしのくっつく細かなしくみの美しさに感動されたようです。 ひっつきむしには「機能美」があるようです。

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2007年10月30日 (火)

ウラギンシジミ

 今年はどういうわけか、よくウラギンシジミに出会いました。 でも、そのほとんどがオスでした。 ウラギンシジミは成虫越冬しますので、これからも出会えるかもしれませんが、とりあえず今までの出会いから・・・。

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   オス(夏型) 平成19年7月16日 岩室にて

 

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   水を吸うオス(夏型) 上と同日・同じ場所ですが、別個体です。

 

 下はメス(秋型:前翅の先端が尖っている)ですが、後翅が欠けています。 鳥に襲われたのでしょうか?
 後翅に目玉模様と尾状突起を持つシジミチョウはたくさんの種類があり、これらは眼と触角に似せて鳥の目を欺いているのだと言われています。 でも、目玉模様も尾状突起も持たないウラギンシジミも同じ所を狙われているとしたら、どう考えればいいのでしょうか? 後翅がやられたのは単なる偶然なのでしょうか?

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 ウラギンシジミの翅の裏の白は、陽のよく当たるところを飛んでいると、よく目立ちます。 でも、葉の茂っている樹の葉の裏に止まると、白っぽい葉の裏の色彩とよく似た色になり、少し離れると、案外見分けにくいものです。 一見目立つ銀色ですが、保護色としても機能しているのではないかと思います。
 また、夏の暑い日にはほとんど翅を広げていないように思います。 銀色は光を反射して体温上昇を防ぐ機能もあるのかもしれません。

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2007年10月29日 (月)

ノブドウ

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 ノブドウの実は紫色を経て空色に熟します。 手元にある植物図鑑の一冊では、黒紫色に熟し、さまざまな色は虫に寄生された虫えい(=虫こぶ)の色だと書いてあり、そのように書かれているHPもあります。 でも、中の種子を調べてみると、紫色の実(少し硬い)も空色の実(熟している)も、ちゃんと種子ができています(下の写真)。
 環境にもよりますが、昔見たノブドウは、たしかに多くの実が、ブドウタマバエやブドウトガリバチに寄生されて大きく膨らみ、形もいびつな虫えいになっていました。 でもどういうわけか、最近は虫えいになっているノブドウの実は少なくなった気がしています。

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2007年10月28日 (日)

コバネイナゴ

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 日本には8種類のイナゴがいますが、いちばん普通に存在するのが、このコバネイナゴです。 地方によっては「イナゴの佃煮」として親しまれてきました。
 成虫は7月~11月頃までみられ、卵で越冬します。
 「小翅稲子」の名前のように、イネ科の植物を食べ、翅は腹部より短くいのが普通です。 しかし翅が腹部よりも長い長翅型もいて、このタイプはハネナガイナゴと分けるのが難しく、交尾器を調べる必要があるようです。

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2007年10月27日 (土)

シュクシャ

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※ 今日はデータ量が多いので、どの写真も、クリックしても大きくなりません。

 

 親類から、畑で育てたシュクシャの花をいただきました。 花瓶に入れておいたところ、今日は部屋中芳香に満ちています。
 シュクシャはショウガ科の植物で、インド~マレー半島の原産で、香料の原料にも使われます。 名前は漢方の縮砂と混同されたものでしょう。 園芸上はジンジャーとも呼ばれていますが、食用にするショウガとは別物です。

 ショウガ科の花のつくりは変わっています。 シュクシャの花のつくりを見ていきましょう。
 ショウガ科は単子葉植物で、単子葉植物の花は「3」という数を基本として作られています。 でも、一見、シュクシャの花は花弁が4枚(そのうち上の2枚はくっついている)のように見えます(下の写真)。

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 そこから1本、何か突き出しています。 この突き出したものの拡大が下の写真です。

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 よく見ると、オシベの葯の先端にメシベの柱頭がついているようですが、じつはメシベがオシベに取り囲まれているのです。 メシベとオシベをそっと分離させたのが下の写真です。

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 4枚の花弁のようなもの(以後、a と呼ぶことにします)の後ろには、3枚の細い花被状のもの(以後、b と呼ぶことにします)があります。 花の若いうちは、上の2枚の b は a の後ろにピッタリと張り付き、一番下の b は2枚目の写真のように前に出てきています。 でも、古い花になると、垂れ下がってきますので、存在の確認には、この時期の方がいいでしょう(下の写真)。

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 a と b の下は、長~い管状になって伸び、苞の中に隠れます。 この苞をめくってみると、下のほうに、半透明の花被状のものがあります。 これを c と呼ぶことにしましょう。 下の写真は、これがよく分かるように花を下に曲げて写しています。

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 これで花被状のものが、下から c、b、a と、3種類あったことになります。 一般的な花のつくりで花被といえば、下からガク、花弁・・・ 2種類しかありません!

 そろそろ結論をお話します。 この結論は、シュクシャに近縁な植物の花のつくりとの比較などから導かれるものです。
 花の一番下にある c がガクです。 そして、花弁は基部が筒状になっていて長く伸び、その後3裂した花冠が b です。 ではいちばん花弁らしい a は!?
 a はオシベが花弁化したものなのです。 近縁の植物から類推すると、オシベは6本あり、うち、花粉を出しているのは1本のみで、他の4本は花弁化し、残りの1本は退化したものと考えられます。

 次に、花粉媒介について考えてみます。
 花の基部の断面を作ってみると、たくさんの胚珠の上に黄色い蜜腺があります。 もちろんメシベは延々とここまで続いています。 下の写真は、よく分かるように、メシベを外に引っ張り出しています。

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 上の蜜腺で作られた蜜は花の下に溜まっていますから、この蜜を飲むのは、よほど長い口を持った花粉媒介者でしょう。 そして、この花粉媒介者は、メシベとオシベが突き出していることから、ホバリングすると考えられます。 この花粉媒介者は、スズメガのような昆虫でしょうか? それともホバリングできる舌の長い鳥がいるのでしょうか?
 花弁化したオシベがくっつきあっている中央には、この花粉媒介者が蜜を吸うために口を差し込む穴が、ちゃんと用意されています。

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2007年10月26日 (金)

エノキグサのアカヒメヘリカメムシ

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 家のすぐ近くの、セメントで覆われた路傍のほんの少しの隙間にエノキグサが生えていて、そこに数頭のアカヒメヘリカメムシが来ていました(上の写真には3頭写っています)。 エノキグサは1年草ですから、アカヒメヘリカメムシが代々この草の上で生きてきたとは考えられません。 どこからか来たのでしょうが、カメムシはよく同種の集団で見つかりますが、どのようにして仲間どうしが引き合うのか、仲間同士でいるメリットはあるのか、カメムシの集団を見ると、いつも不思議に思います。
 アカヒメヘリカメムシは、イネ科、タデ科、キク科などのさまざまな植物に付く、普通に見られるカメムシですが、1cm足らずの大きさで、色も目立ちにくい茶色ですので、あまり注目はされていないようです(私も名前はネットで教えてもらいました)。 でも、拡大してみると、なかなか個性的です。

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 エノキグサは、その葉がエノキの木の葉に似ているところからの名前です。 トウダイグサ科で、赤いオシベを持った雄花は、集まって細い穂となっています。 雌花には包葉がついていて、下の写真では、ほとんどの雌花はすでに果実になってしまっています。

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2007年10月25日 (木)

キバナコスモス

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 Cosmos属の花です。 野生のコスモスの分布の中心はメキシコ辺りにありますが、このキバナコスモスもメキシコ原産です。
 キバナコスモスは本来の短日性の性質が薄れて、温度の上昇によって開花する性質が強くなってきています。 ですから、夏のイメージ。 そろそろお別れの季節です。
 花が終わると、子房が急に伸びてきます(下の写真)。 子房の上にはガクが変化したノギがあります。 これを見ると、Cosmos属は、コセンダングサなどのBidens属に近縁であることが分かります。

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 完成した果実では、ノギは果実の直角方向を向き、T字型になります。

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2007年10月24日 (水)

ホシササキリ

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 ホシササキリの「ホシ」は、前翅の付け根付近の側面に黒点が1列に並んでいるところから。
 上はオスで、メスは下の写真のように長い産卵管を持っています。
 ホシササキリはイネ科の穂などを食べていて、下の写真のような草地に住んでいるのが普通です。 上の写真はコナラの葉の上にいるところを撮りましたが、この手前が広い草地だったのですが、その草が刈り取られていましたので、避難していたのかもしれません。

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2007年10月23日 (火)

マダラカマドウマ

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 マダラカマドウマが家の中に迷い込んできました。 久しぶりの“ご対面”です。 大きさからして幼虫でしょうが、成虫と姿はほとんど変わりません。
 マダラカマドウマはカマドウマの仲間では最も普通に見られる種類で、雑木林に多く、夜にクヌギの樹液に集まったりしていますが、少し湿った薄暗いところが好きで、昔は家の中にもよく入り込んできました。
 「カマドウマ」の名前の由来です。 「カマド」を知らない人も増えてきましたが、なべや釜を載せて煮炊きするところで、昔は土間に作られていました。 炊事には水を使いますので、カマド周辺の温かく湿った土間の隙間はカマドウマたちの好む場所であったわけです。 なお、昔の別棟に作られた便所も、薄暗く湿気のある場所で、そこにもカマドウマたちがいて、「便所コオロギ」とも呼ばれていました。
 次に「ウマ」ですが、どうもよく飛び跳ねるところから来ているようです。 頭を低くして背中を丸め、ピョンピョン飛び跳ねる姿は、たしかにロデオの馬に似ています。
 マダラカマドウマは、脚の長いカマドウマの仲間の中でも、特に長いほうです。

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※ 森に住むカマドウマの1種モリズミウマはこちらでどうぞ。

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2007年10月22日 (月)

トホシテントウの幼虫

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 昨日紹介したスズメウリ(この実は若くて、まだ白っぽくなっていない)にいたトホシテントウの幼虫です。
 それにしてもすごいトゲです。 いかにも毒があって刺されたら大変なことになりそうですが、無毒のようです。
 テントウムシの仲間でいちばんポピュラーなナナホシテントウがアブラムシを食べるため、テントウムシの仲間全てがアブラムシなどの害虫を食べる益虫のように思っている人もいるようですが、テントウムシの仲間には肉食性のものと草食性のものがいます。 このトホシテントウは、幼虫も成虫もカラスウリやスズメウリなどの葉を食べます。
 下はカラスウリにいたトホシテントウの幼虫です。 トホシテントウはこの幼虫の姿で越冬します。

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   刺にピントを合わせて

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2007年10月21日 (日)

スズメウリ

 白っぽいスズメウリの果実が目立つ季節となってきました。 果実は径1~2cm。 小さいので、カラスウリに対して、スズメさんのウリなのでしょう。

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  撮影:10月20日、岩室にて

 

 スズメウリはウり科の1年草。 花は8月、雌雄異花です。

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  雄花 撮影:8月17日、鉢ヶ峯にて

 

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  雌花 撮影:8月25日、岩室にて

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2007年10月20日 (土)

ヤマトシジミ

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 ヤマトシジミが、食草のカタバミの近くに、たくさんいました。
 以前からこの場所にはヤマトシジミが群がっているのですが、気温が下がってきて動きが少し鈍くなっているのでしょうか、今日は容易に近づくことができました。
 翅も広げてくれました(下の写真)。 翅の表は、オスは青藍色、メスは暗褐色と言われています。 写真の個体は、太陽の光を浴びて青く輝いている部分が目立ちますが、行動からして、メスだと思っています。 カタバミの葉の間に潜り込むのは、産卵場所を探しているのでしょうか?

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 下は9月24日に撮った写真です。 上の場所のすぐ近くで撮りました。

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  食草のカタバミ

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2007年10月19日 (金)

チャバネアオカメムシ

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 チャバネアオカメムシがノイバラの実の上にいました。 チャバネアオカメムシの眼の色は赤。 ノイバラの実の色との競演です。
 なかなか美しいカメムシですが、秋にはリンゴなどの果樹園に集まり、果実の汁を吸って加害することも多い昆虫です。
 チャバネアオカメムシは、このまま成虫で越冬します。 冬を越した成虫は春に産卵し、そこから育った成虫は夏に卵を産みますので、幼虫は6~7月と8~9月に見られます。 いろんな果実の汁を吸いますが、スギやヒノキの球果が好みのようです。

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【追記】
 下は10月20日に上と同じ場所で撮ったものです。 カメムシは脱皮後は赤っぽい色をしていることが多く、写真の個体も脱皮して間もない4齢くらいのチャバネアオカメムシの幼虫ではないかと思っています。

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2007年10月18日 (木)

オオハナアブ

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 オオハナアブは体長15mm前後、春から秋まで、さまざまな花を訪れているのが観察できます。 写真のように、セイタカアワダチソウにも、よく来ています。
 眼の模様が特徴的です。 体の色は、ハナバチの仲間に擬態しているのでしょう。

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2007年10月17日 (水)

トビイロウンカ

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 稲刈りの終わった後の田んぼのイネのひこばえに、たくさんのトビイロウンカがいました。
 トビイロウンカは越冬できず、毎年中国方面から風に乗って飛来し、3世代まで世代交代しながら次第に個体数を増やし、セジロウンカが夏ウンカと呼ばれているのに対し、秋ウンカと呼ばれています。
 トビイロウンカの成虫には長翅型と短翅型があり、上の写真(写真のクリックで拡大できます)は、長翅型の幼虫から成虫まで混じっている状態です。 短翅型は第2世代までに多く見られます。

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 この記事は最初ヒメトビウンカとしていましたが、コメントをいただき、タイトルと内容を書き換えました。 しかしまだ、両者を識別するポイントが、よく分かりません・・・

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2007年10月16日 (火)

チャドクガ

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 ドクガの存在が蛾のイメージを悪くして、チョウまでも同様に扱われて粉のつく虫は全部ダメという人もいます。
 人を刺す毛を持つ蛾はそんなにいないのですが、ドクガと並んで、このチャドクガも要注意です。 しっかり覚えておいて損はありません。 開張はオスで約25mm、メスで約30mmくらいです。
 チャドクガは年2回発生し、羽化するのは6~7月頃と9~10月頃です。 今が2回目の発生時期で、写真のチャドクガは我家で見つけたものです。
 名前のとおり、幼虫はチャの葉を食べますが、チャだけでなく、ツバキやサザンカなどのツバキ科で発生が見られます。
 幼虫は長い毛と微細な毒針毛を持ち、毒針毛は50万本もあるといわれています。 幼虫の体に生えていた毒針毛は、サナギになってもその表面についていますし、雌の成虫は羽化する時に腹の先に毒針毛をつけて飛びたち、それを卵塊になすりつけます。 本来は自分自身を守るためのものですが、結果として、卵、幼虫、脱皮殻、成虫のどの段階でも、人はチャドクガの毛に刺されるということになります。

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 チャドクガの翅の模様の特徴としては、白い内・外横線と、前翅の縁毛のほぼ中央が黒っぽいことが挙げられます。

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 オスの体色は橙黄色~黒褐色と変異に富んでいますが、第1化のオスは下のように黒っぽくなるようです。 下は7月1日に自宅で写したものです。

Chadokuga070701_1  かわいい顔してるんですけどね・・・。

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2007年10月15日 (月)

ノダケの花に来たヒメスズメバチ

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 ヒメスズメバチが10月11日に紹介したノダケの花に来ていました(10月13日)。 カメラを近づけても全くカメラを意識しないかのように、小さな花を一つひとつ舐めまわしていました。
※ 大阪で普通に見るスズメバチの種類は、私のHPのこちらにまとめてあります。

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 この日、クロウリハムシも何頭かノダケの花に来ていました。

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2007年10月14日 (日)

ウラナミシジミ

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 ウラナミシジミは大阪付近では年5~6回発生し、決まった越冬態も持ちません。 また、ウラナミシジミは移動性が高いチョウとしても知られています。 春から秋にかけて個体数を増やしながら、越冬できない地域にまで分布を広げていきます。
 幼虫の食草は、さまざまなマメ科植物です。 近くに茂っているクズで発生したのでしょうか、昨日はコセンダングサにたくさんのウラナミシジミが来ていました。
 ウラナミシジミの名前は翅の裏の模様(上の写真)から来ていますが、翅を開いたときに見える表は光沢のある美しい青です(下の写真)。 でも、光沢を写真で表すのはほんとうに難しいですね。

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※ 上の写真のコセンダングサでは、ほんの少し白い舌状花が見えています。 昨日のコセンダングサの記事で、コシロノセンダングサはコセンダングサの変種だと書きましたが、コセンダングサとコシロノセンダングサは、このように連続します。

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写真の投稿

 このブログで紹介した写真も含め、写真としておもしろそうなものを、10月からはじまった「Fotonoma 旬の写真館」に投稿しています。 写真の好きな方は、よかったらご覧ください。 と言っても、名前は写真をクリックしないと出てきませんので、このブログで登場した写真以外は私のものとわかって頂けるかどうか・・・。 それに、Fotonomaの会員にならないと、コメントや投票もしていただけませんが・・・。
 とりあえず、お知らせだけしておきます。 投稿しているアルバムは、今のところ、植物、生物、静物、スナップです。

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2007年10月13日 (土)

コセンダングサ

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 キク科の頭花はたくさんの花の集まり。 コセンダングサは舌状花を欠いていて、筒状花の集まりです。
 よく見ると、多くの花で、トンガリ屋根の塔が建っているように見えます。 これがオシベ。 “トンガリ屋根”に花粉をつけて伸びてきます。 そして、花粉が運ばれて無くなりかけた頃、“トンガリ屋根のハッチ”が開き、中からメシベが出てきます(下の写真中央の、毛がいっぱい生えていてハート型にカーブした部分)。 つまり、1つずつの花は、雄性先熟です。

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 花が終わると、子房(下の写真の黒い部分)が伸びてきます。 子房の上には、ガクが変化した“槍”が並んでいます。

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 下の写真は、果実が成長した状態です。 果実の表面にも鋭いトゲがついていますが、その先端にある“槍”には、子房の表面とは逆向きの鋭いトゲが生えています。

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 最初に、コセンダングサは舌状花を欠くといいましたが、時々白色の舌状花をもつ変種が混じることがあります。 この変種はコシロノセンダングサと呼ばれています。

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2007年10月12日 (金)

センニンソウ

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 センニンソウの果実が白い毛を広げていました(上の写真)。
 センニンソウの名前は、もちろん、上の写真のような毛を、仙人の白毛に見立てたものでしょう。 この毛は、花の後に、メシベの花柱であった部分が伸び、それに羽状の毛が生えたものです。
 花の様子は下に載せておきます。 下の写真にはツボミがたくさん写っていますが、これを見ると、白い花被の外側には何もありません。 ということは、もうこのブログではおなじみのパターン、花の白い花被は、花弁ではなく、ガクです。
 センニンソウはキンポウゲ科のツル植物です。 キンポウゲ科も、花弁が退化した花がよく見られる科のひとつです。

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2007年10月11日 (木)

ノダケ

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 白い花が多いセリ科の中で、紫の花は、なかなか印象的。 白い葯が目立ちます。
 名前の由来は、葉が落ちたときの姿が竹に似ているので「野竹」であるとか、野原等で高く目立つので、「野丈」または「野高」であるとか言われています。 このように、どのような漢字を使っていいのか分からなくなってしまった植物もあるので、植物の「和名」は漢字を使わず、カタカナで表すきまりになっているのです。
 この植物は、前胡(せんこ)という名前で、生薬としても用いられています。

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2007年10月10日 (水)

オオニシキソウ、コニシキソウ

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  オオニシキソウ

 オオニシキソウもコニシキソウも、北アメリカ原産の一年草です。
 日本にはもともとニシキソウという植物があったのですが、これはコニシキソウに押されて少なくなりました。 ニシキソウの名前は、茎のピンクと葉の緑が目立つところから、「二色草」です。 「錦」ではありませんが、拡大すると、それなりの美しさを持っています。
 これらの植物の仲間には、他に、シマニシキソウ、ハイニシキソウなどがあります。 これらは全て、Euphorbia属(ユーフォルビア)です。
 ユーフォルビアの花は複雑、というよりも、どれが1つの花でどのようなつくりになっているのか、まだ定説がありませんが、大方の説としては、1つの花のように見える部分は、たいへん小さいですが、たくさんの花が集まっていると考えられています。 上のオオニシキソウでは、1つの花のように見える部分から、大きな果実が飛び出してきています。
 上のオオニシキソウの白い部分も花弁でもガクでもなく、オシベとメシベを取り囲む腺体の付属片と考えられています。
 オオニシキソウは、斜めに立ち上がり、数十センチの高さになりますが、コニシキソウは地を這います。 葉の上面にはふつう黒班があり、茎にも果実の表面にも白い毛が多いのが特徴です。

 

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  コニシキソウ

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2007年10月 9日 (火)

ヤナギバルイラソウのツボミを食べるハスモンヨトウの幼虫

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 上はヤナギバルイラソウの花です。 キツネノマゴ科の植物で、「ルイラ」はこの植物の学名 Ruellia brittoniana の「ルエリア」の英語的発音からきているのだと思います。
 ヤナギバルイラソウはメキシコ原産の園芸植物で、春から晩秋まで花を咲かせ続ける半耐寒性常緑小低木です。 繁殖力が強く、逃げ出して道端などで増えだしているところもあるようです。
 花は大きいのですが、1日限りの花で、そのかわり、次から次へとツボミができてきます。
 そのツボミが、ハスモンヨトウの幼虫にかじられていました(下の写真)。
 ハスモンヨトウの幼虫は、いろんな植物を食べます。 もちろん農作物も食べるので、害虫として嫌われています。
 ヨトウガ(夜盗蛾)の仲間は、名前のとおり、多くは夜に地面に近いところの植物をかじるのですが、葉よりはツボミの方が柔かくておいしいのでしょう、時刻は午前10時半だというのに、昼夜を忘れたかのように、熱心にかじり続けていました。 ほとんどのツボミが被害にあっているようでした。

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 ヤナギバルイラソウの種子にはおもしろい性質があります。 そのことはこちらでどうぞ。

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2007年10月 8日 (月)

キンバエを捕らえたハナグモ

 シソの穂の上で、ハナグモがキンバエ(の仲間:頭部も背面も見えない状況では、正確な名前は無理です)を捕らえていました。 自分より大きな獲物をみごとに抱え込んでいます。

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 ハナグモはカニグモ科に分類されている徘徊性のクモです。 写真は全身緑色ですので幼体だと思いますが、成体になると、腹背に褐色の斑紋が出てきて、メスは7mm前後で頭胸部は緑色、オスは4mmくらいで頭胸部は赤褐色になります。

 横から。 捕らえられたキンバエには気の毒ですが、美しい色をしています。

Hanagumo070924_2

 

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 舞台となったシソ畑(堺市フォレストガーデン)

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2007年10月 7日 (日)

イヌタデの花穂で

 またデタ、タデが・・・ではありません。 今日の主役は・・・
 下の写真、いつもと違って、ピントが少し甘いような・・・と、思われた方、違うんです。 今日の主役には、ピントがしっかり合っているんです。

Murasakisirahosikamemusi070929

 上の写真で、真ん中少し下のイヌタデの花穂にいるムラサキシラホシカメムシ(マルシラホシカメムシかもしれません。区別が付けられずにいます。)に目が行ったと思いますが、今日の主役は、このムラサキシラホシカメムシではありません。 その上の、少し黒っぽい“花”が、今日の主役です。

 この少し黒っぽい“花”、じつはトガリオニグモというクモです。
 クモは肉食で、植物の葉を食べるわけでもありませんから、どこにいても良さそうですし、このトガリオニグモは円網を張って餌を捕まえるクモです。 でもこの時は、イヌタデの花になりきっているように思いました。
 この後、ムラサキシラホシカメムシはトガリオニグモに気づかなかったのでしょう、どんどん上っていきました。 トガリオニグモは自分よりはるかに大きな虫が近づいてきたわけですから、さすがにガマンできなくなったのでしょう、糸を引いて空中に脱出しました。
 しばらくして、トガリオニグモは糸を伝ってもといた場所に戻りました。しばらくモゾモゾしていましたが、まもなく動かなくなりました。それが下の写真です。 どう見ても周囲の花の様子を意識しているとしか思えませんでした。
※ 下の写真はクリックすると拡大します

Togarionigumo070929_1

 

 少し角度を変えて、斜め横から。 動かないものの撮影は楽です (^_^)v

Togarionigumo070929_2

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2007年10月 6日 (土)

イヌタデ、ミゾソバ、アキノウナギツカミ

 今日の散歩でも、こんなタデにであっタデ! というわけで、一昨日、昨日に続き、タテつづけにタデです。
 タデ科の解説等は一昨日・昨日の記事を見ていただくとして、今日は鑑賞重点で。

 

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  イヌタデ

 

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  ミゾソバ

 

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  アキノウナギツカミ

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2007年10月 5日 (金)

イシミカワ

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 イシミカワの花は青白く、目立たない3mmほどの小さな花ですが(上の写真)、花後は下の写真のように、きれいな青い色になります。 でも下は、単なる果実ではありません。 よく見ると、まるでツボミのように、花被が重なったような線が見えます。

Isimikawa070929

 じつはイシミカワはタデ科です。 とくれば、昨日の記事の繰り返し。 写真で青く見えているのはガクで、花の終わった後に水分を含んで膨らみ、色がついたものです。 中には黒くて硬い果実が1個あります(下の写真)。

246897_1318772958    (わんちゃん撮影:コメント参照)

 東京大学名誉教授であった前川文夫先生は、イシミカワは「石実皮」ではないかと言っておられます。

※ 8月25日に紹介したミズヒキもタデ科で、ガクが果実を保護することも同じです。 また、花弁が退化してガクしかない花は、タデ科以外にも、いろんな科でたくさん見ることができます。 このブログでも今までに、カンアオイイチリンソウニリンソウエンレイソウツクバネソウなど、たくさん紹介してきました。

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2007年10月 4日 (木)

ボントクタデ(花を中心に)

 タデの仲間が咲き乱れる季節となりました。 タデの仲間は花も小さく、よく似た種類も多いのですが、拡大してみるとなかなか美しい種類もたくさんあります。 このボントクタデも、淡いピンクと濃い赤の対比がなかなか美しいものです。
 下の写真、花はもちろん淡いピンク。 では、赤いのは?

Bontokutade070929_1

 赤いのはツボミではありません。 下の写真(タデの仲間は細くていい写真にするのは難しいです (^_^;) )の垂れている花穂で、花は概ね花穂の下の方から咲き始め、花穂の先の方にツボミがあるのですが、ツボミはむしろ白っぽい。 赤いものは、花穂の付け根に近い部分に多いようです(下の写真をクリックして拡大して確認してください)。
 上の写真の赤いものをもう一度よく見ると、咲いている花の下のものは、花被(ガクと花弁をまとめて花被といいます)の重なり具合でガクと花弁に分かれているようにも見えますが、右上の赤いものをみると、緑から次第に赤っぽくなっています。 そして、咲いている花の花被を見ると、やはり淡い緑から次第に淡いピンクになっています。 この両者は同じものでしょう。 そして、改めてガクと花弁は・・・と思って探すと、・・・
 この花は、ガクと花弁がそろっていません。 では、上で見たものは、ガクなのか花弁なのか?
 ガクは花弁より長持ちするのが一般的。 いろんな状態で同じものを見ることができるということは、ガクでしょう。 つまり、この花の花弁は退化して消失していると考えるべきでしょう。 ツボミ・花と白っぽかったガクは、花が終わっても残り、次第に赤くなって、成長する果実を包み込み、保護しているのです。
 秋が深まると、赤くなったガクがたくさん目立つようになり(こちらでご覧ください)、美しくなります。

Bontokutade070929_2

 タデというと「蓼食う虫も好き好き」という諺が思い出され、タデの葉は辛いものだと思われがちですが、辛いのはヤナギタデです。
 「ボントク(凡篤)」とは「愚か者」といった意味で、ヤナギタデに似て辛くない葉を、間が抜けていると捉えたところからの名前です。

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2007年10月 3日 (水)

イボクサ

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 イボクサは、休耕田などの湿地に生える1年草で、花の径は13mmほどですが、拡大すると、先がピンク色に染まった花弁やオシベの青い葯など、なかなか美しい花です。
 名前の由来は、昔この草をイボ取りに使ったところからということです。
 ツユクサ科の植物で、葉のつき方も、ツユクサによく似ています(下の写真)。 オシベの花糸にはムラサキツユクサと同じように長い毛が生えています。 また、ツユクサにも花粉を出さないオシベがあり、仮オシベまたは飾りオシベと呼ばれていますが、このイボクサのオシベも、6本のうち、短い3本は花粉を出しません。 下の写真は、長い、青い方のオシベが花粉を出していて、青い色が目立たなくなってしまっています。
 仮オシベはどのような働きをしているのでしょうか。 花粉を出さないのですから、役立っているとすれば、虫を引きつけるということでしょうが、ひょっとしたら、ツユクサ科のメシベの柱頭は小さい傾向があるのですが、そのことと関係しているのかもしれません。 虫の目には、この仮オシベはどのように映っているのでしょうか?

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2007年10月 2日 (火)

シロオビノメイガ

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 昨日に続いて、ノメイガ亜科のガをもう一種、今日はシロオビノメイガです。
 昨日のシロモンノメイガ同様、昼間から活発に活動します。 写真はマルバハッカの花で吸蜜中です。
 幼虫の食草は、アカザ科、ヒユ科など幅広いのですが、ホウレンソウの害虫として嫌われています。

 8月19日の記事で、チョウやガの仲間では、科を超えてよく似た翅の模様が見られることがあることを書きました。 このシロオビノメイガの翅の模様も、ホソオビアシブトクチバやハチノジエダシャクなど、違う科でよく似たパターンが見られます。

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2007年10月 1日 (月)

シロモンノメイガ

Siromonnomeiga070929

 シロモンノメイガがヒヨドリバナの花を吸蜜に訪れていました。 シロモンノメイガは、このように昼間も飛び、花を訪れるガです。
 ツトガ科(分類がゆれていて、少し前まではメイガ科とされていました)の「ノメイガ亜科」に分類されているガです。

◎ シロモンノメイガはこちらにも載せています。

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