« ツノホコリ | トップページ | 4本の足で止まる①(コシアキトンボ、チョウトンボ) »

2007年8月28日 (火)

ショウリョウバッタ(体色について)

Syouryoubatta070825_1

  写真をクリックしてフォト蔵に飛び、画面上の表示サイズを変更すると、
  1600x1200 まで拡大できます。

 細く伸びた顔、長い足と、個性的なバッタです。
 乾燥気味の草原に多く、イネ科などの植物の葉を食べて暮らしています。
 ショウリョウバッタには、緑色のもの、褐色のもの、その両方が混じったものがいますが、いつもコメントをいただいているわんちゃんから、「そよかぜBBS」に褐色型(下の写真)と緑色型の写真が送られてきて、色が違うのは「なぜ」ですかという質問をいただきました。 いただいた下の写真は、ショウリョウバッタの幼虫です(翅が短い)が、幼虫だから褐色というわけではありません。

Syouryoubatta_wanchan

 「なぜ」色が違うのかという質問に簡単に答えることは簡単です。 保護色として機能しているのでしょう。 特にこれからの季節、ショウリョウバッタの生息する乾燥気味の草原は、種子生産を終えたイネ科の植物などが茶色っぽくなっている場所も増えてきます。 実際、多くの場合、緑色の個体は青い草の上に、茶色の個体は枯れ草などの上にいます。
 でも、この現象だって、ショウリョウバッタが周囲の環境の色と自分の体色を“理解”していて、体色に近い環境から離れようとしないのかは疑問です。 ひょっとしたら、ショウリョウバッタの緑色型と褐色型はランダムに発生するのですが、緑色の環境の褐色型や茶色い環境の緑色型は目立つために食べられてしまい、個体数が少なくなったのかもしれません。 このような調査は既に行われているのかもしれませんが、報告を見つけることはできませんでした。
 さらに、この「なぜ」を、どのような情報を元に、どの時期に体の色が決まるのか、という意味に取ると、おもしろいテーマですが、これも研究報告を見つけることはできませんでした。
 私の知っている昆虫の体色を決める仕組みについての報告は、アゲハチョウのサナギの色についてです。 アゲハチョウ(ナミアゲハ)のサナギには緑色と灰色がありますが、サナギは移動できませんから、目立つか目立たないかは大問題です。
 ナミアゲハのサナギの色を決める最も大きな要因は、蛹化場所の表面がザラザラか(古い枝)、ツルツル(若い枝で緑色の可能性が高い)かのようです(平賀壮太:Journal of Insect Physiology Vol.51(9),2005)。 この外、蛹化場所での食草の匂い(食草から発散する揮発性物質)、光、湿度、温度、日長などもサナギの色に影響するようです。
 色そのものが要因になっていないのはおもしろいところです。 もっとも目に入ってくる色情報と自分がいる枝の色とを区別するにはたいへんな“理解力”を要するでしょうし、昆虫の見ている色と私たち人間が見ている色とは全く違いますからね。

|

« ツノホコリ | トップページ | 4本の足で止まる①(コシアキトンボ、チョウトンボ) »

昆虫01 バッタ・カマキリ」カテゴリの記事

コメント

以前、交尾している2匹のオンブバッタが幾日も庭の一角に居続けた結果、緑色から褐色に変色した例を見た覚えがあります。
変色するまでに何日かかったかは覚えておりませんが、成虫が脱皮することなく変色していったらしいということが推測されます。

投稿: タロ | 2007年8月29日 (水) 22時51分

いつでも思うんです、
ムシちゃん達って上手くできてるな・・って

目立ってきれいなムシは毒気がいっぱい、
そうじゃない地味なのは保護色なんかで身を守ってるんですね、

私のなぜ?にたくさんの情報をありがとさんです。

投稿: わんちゃん | 2007年8月29日 (水) 23時47分

タロさん、常識的に言えば、昆虫の体色が変化するのは脱皮のときに限られるはずですが、きちんと記録をとりながら飼育実験をする必要があるかもしれませんね。
昆虫の体色については、まだまだ分からないことがたくさんありそうです。
わんちゃん、おもしろいテーマを提供していただいて、ありがとう。

投稿: そよかぜ | 2007年8月30日 (木) 00時20分

おはようございます♪
うーーん・・色を識別するのに視覚に
頼ってないとは五感どころじゃない
たくさんの感覚をフルに使ってるんですね

ちょっと昆虫になったつもりで
イメージしてみたら情報を処理するのに
時間がかかりすぎて即他の虫に食べられそう

ショウリョウバッタのように目が顔の
両脇についていると焦点を結ばないので
右目は右側を、左目は左側だけを
見てるんでしょうか?


投稿: エフ | 2007年8月30日 (木) 07時59分

エフさん、情報を処理するのに時間がかかりすぎる気がするのは、前頭葉を働かすからでしょう。
左右の眼の視野も、狭いですが、重なります。機会があれば、両眼で見つめられている写真を狙ってみます。おたのしみに。

投稿: そよかぜ | 2007年8月30日 (木) 22時47分

わ~あ!ショウリョウバッタだ♪
今、飼っているんですよ(笑)
それにしてもよく撮れてるなぁ~
私もカメラ最近買って、よく撮るんですけど、イマイチ使いこなせて無くて(^^;
そよかぜさんみたいにキレイに撮れるようになりたいですっ!

投稿: ささゆり@ | 2007年9月 1日 (土) 10時19分

ささゆりさんのブログ、楽しい飼育日誌ですね。
デジカメは、フィルム代が要りませんから、もっといい写真が取れないかと、少しずつ変化を加えて、撮れた写真を確認しながら、どんどん撮ってどんどん消す、これがコツではないでしょうか。

投稿: そよかぜ | 2007年9月 1日 (土) 16時03分

またお邪魔させていただきました!
先日はルリマルノミハムシの件、ありがとうございました!
現在、新たな宿題をいただき、オンブバッタについて調べています。
両眼視の記事は拝見させていただきました!
オンブバッタについて、紹介して頂けたら嬉しいです!
(早速図々しくてすみません!!)

投稿: nagae | 2012年7月30日 (月) 23時15分

オンブバッタの「特にこういうところを」というのがありませんでしたので、全般的に書いてみました。こんなもんでいかがでしょうか。
使用した写真の月日と記事の月日が一致しないのも問題なので、2010年10月27日の記事としてあります。

投稿: そよかぜ | 2012年8月 1日 (水) 00時17分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ショウリョウバッタ(体色について):

« ツノホコリ | トップページ | 4本の足で止まる①(コシアキトンボ、チョウトンボ) »